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引き続き、”弱い輸入”が貿易赤字を減らす~2023年6月の貿易統計

 昨日、2023年6月の貿易統計(速報)が公表され、今朝の日経朝刊では23ヵ月ぶりの黒字の持続力は危ういという指摘がなされています。ただ、かねて指摘しているように月別の貿易収支は季節調整値で観察するのが望ましいです。そして、季節調整値でみると縮小はしているものの、2021年5月から25ヵ月連続で赤字になっています。


輸出金額の伸びが輸入金額の伸びを上回ったけれど…

 季節調整値で見ると、2023年5月までと6月との違いは輸入金額がわずかながらプラス(前月比0.5%増)になった点です。輸出金額の伸び(前月比3.3%増)がそれを上回った結果、貿易赤字が縮小しています。
 その主因は実質輸出、実質輸入が前月比で増加したことと考えられます。実質輸出は前月比5.4%増で、貿易赤字が直近のピークになった2022年10月の水準を上回りました。3月以降の自動車関連の輸出の持ち直しが寄与していると推察されます。まだ財別の実質輸出の6月分が公表されてませんが、減少傾向にある資本財(記事でも触れている半導体製造装置も含まれます)の行方に注目したいです。
 一方、実質輸入は前月比2.7%増でしたが、下のグラフをみると直近のピーク(2022年10月)からの減少傾向は続いているように見受けられます。
 以上から実質輸出の持ち直しは喜ばしいものの、相変わらず”弱い輸入”で貿易赤字が減っている姿には変わりありません。

交易条件は再び改善

 5月との違いは交易条件にも表れており、これも貿易赤字の縮小に寄与していると思われます。5月は交易条件の改善が一服していましたが、6月は再び改善傾向に戻っています。契約通貨ベースで見ると、輸出物価(前月比0.6%低下)も輸入物価(同3.1%低下)も低下していますが、輸入物価の低下が大きいことが寄与しています。ただ、輸入物価の低下の主因となっている鉱物性燃料価格の低下がいつまでも続くわけでもなく、交易条件改善の追い風が今後も続くかどうかは予断を許さないと思います。


#日経COMEMO #NIKKEI


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