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季節調整値でみると経常黒字は前月から減少~2024年5月の国際収支

 昨日(7月8日)、2024年5月分の国際収支統計が公表されました。日経夕刊では「経常収支の黒字額は、比較可能な1985年以降の5月としては過去最大となった」と報じ、9日の朝刊でも「サービス収支が2ヵ月ぶり黒字」と報じています。本稿では季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。

経常黒字の原数値の前年同月差は拡大したが…

5月の経常黒字は季節調整値でみると2.4兆円。4ヵ月ぶりに減少しました。2024年4月(2.5兆円)からの黒字減少には貿易収支、サービス収支、第一次所得収支のすべてが寄与しましたが、最も大きく寄与したのはサービス収支の赤字拡大(4月:▲0.1兆円→5月:▲0.2兆円)でした。
 一方、原数値の前年同月差は0.8兆円のプラスで4月(同0.2兆円)から0.6兆円拡大しました。貿易収支の前年同月差がプラスに転じた(4月:▲0.5兆円→5月:0.1兆円)こと、サービス収支の前年同月差もプラスに転じた(4月:▲0.2兆円→5月:0.2兆円)ことが寄与してます。日経夕刊で注目していた第一次所得収支のプラス幅はむしろ縮小(4月:0.8兆円→5月:0.5兆円)しました。

輸出金額の前年同月差が輸入金額のそれを若干上回る

貿易収支の前年同月差がプラスになったのは輸出の前年同月差のプラス幅が輸入のそれをわずかに上回ったためです。
実質輸出を確認すると、5月は4月から減少しています。前年同月比でみても0.9%減。一方、実質輸入も前月比、前年同月比ともに減少していて、前年同月比は3.4%減と実質輸出の減少率を大きく上回っています。弱い輸入のおかげで貿易収支赤字が前年同月に比べて縮小した形です。実質輸出を財別にみると、4月にプラスになった自動車関連が再び減少したほか、情報関連も2ヵ月連続で減少しています。
 貿易統計で通関輸入金額の前年同月比を確認すると、4月の8.4%増から5月は9.5%増と拡大しています。寄与度の変化をみると、化学製品(4月:▲0.1%→0.6%)、食料品(4月:0.8%→5月:1.3%)の拡大が目立ちます。

サービス収支の前年同月差拡大は知的財産権等使用料収支が貢献

 サービス収支の前年同月差が再びプラスに転じたのは、知的財産権等使用料収支の拡大が大きく寄与しています。4月の前年同月差は▲63億円だったのが5月は1838億円のプラスになりました。特許などの「産業財産権等使用料」の受取が前年同月に比べて増加したことが主因です。
 第一次所得収支の前年同月差は、直接投資のプラス幅(4月:3584億円→5月:1478億円)、証券投資のプラス幅(4月:5001億円→5月:4153億円)がともに縮小しています。

#日経COMEMO #NIKKEI


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