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いつ以来の上昇率?-2023年平均の消費者物価

本日(19日)、2023年12月と2023年平均の消費者物価が公表されました。日経電子版は2023年の消費者物価上昇率のうち生鮮食品を除く総合で41年ぶり伸び率になったことや、サービス価格が半年連続で2%台上昇になったことに注目しています。記事で紹介されているみずほリサーチ&テクノロジーズの「岩盤品目」という分析も大変興味深いです。本稿では、少し視点を変えて、2023年の消費者物価上昇率を見ていきます。


「総合」だと1991年以来、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」だと1981年以来の上昇率

 日経の記事では、金融政策の判断材料で用いられる「生鮮食品を除く総合」ベース(3.1%上昇)で、1982年(3.1%上昇)以来の消費者物価上昇率であると書いています。一方、毎月の消費者物価上昇率のリリースでは、「総合」、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」も1ページ目で紹介されています。「総合」(2023年平均は3.2%上昇)で見ると1991年(3.3%上昇)以来の伸び率です。「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(2023年平均は4.0%上昇)でみると、1981年(4.7%上昇)以来の伸び率となります。何を消費者物価上昇率の代表的な尺度とみるかによって、「○年以来」も変わってきます。近年の日本では、輸入に頼るエネルギー価格の上昇が、時折、消費者物価上昇率の押し上げに寄与してました。言い換えれば、「総合」の上昇率が「生鮮食品を除く総合」の上昇率を上回ることが多かったのです。 
2004年以降の過去20年間でみると、「総合」≧「生鮮食品とエネルギーを除く総合」なのは14年、そうでないのは6年に過ぎません。一方、1980年以降の44年間でみると、「総合」≧「生鮮食品とエネルギーを除く総合」は23年、そうでないのは21年とほぼ半々です。2023年の消費者物価動向は近年とは傾向が異なるともいえそうです。

サービス物価上昇率は1994年以来の高さ

 以上のような「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の伸び率の高さを生み出している一因はサービス物価の上昇率です。サービス物価上昇率(2023年は1.8%)は1994年(1.8%)以来の高さ。私のコラムで継続的に注目している一般サービス物価上昇率(2023年は2.3%)は、1993年(2.7%)以来の高さです。最近、株式市場では「バブル崩壊以来の高値」という言葉がよく飛び交っていますが、消費者物価上昇率もバブル崩壊以来の高さになっていると思われます。

2023年は食料の上昇率が目立つ

 「総合」の上昇率が2023年とほぼ同じであった1991年と、内訳を比較してみましょう。まず、財とサービスに分けて観察すると、2023年は財の上昇率が高い。サービスは1991年に比べると上昇率は及びません。
 10大費目別でみると、「食料」や「家具・家事用品」の上昇率が目立つ。同じ「総合」の上昇率であっても、中身はだいぶ違いますね。

#日経COMEMO #NIKKEI


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