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賃金上昇率の加速は、特別給与のブレのせい?~2024年1月の毎月勤労統計

 昨日(7日)、毎月勤労統計調査の2024年1月速報値が公表されました。日経電子版は、実質賃金の減少幅が縮小したことに注目しています。名目賃金の上昇率が2023年12月から拡大した一方で、物価上昇率が小さくなったためです。ただし、賃金上昇率の加速は、特別給与の前年同月比のブレとみた方が良さそうです。以下、確認してみましょう。


1月の特別給与が2ケタ増って実勢?

 就業形態計の現金給与総額の前年同月比は、11月(0.7%)→12月(0.8%)→1月(2.0%)と、確かに急上昇しています。フルタイムの一般労働者に限っても、同様の傾向がうかがえます(1.1%→1.4%→2.3%)。
 しかし、下の表に示したように、定期給与(所定内給与+所定外給与)に限定すると、11月(1.0%)→12月(1.4%)→1.4%(1月)と安定した伸びが続いています。いわゆるボーナスにあたる特別給与の変動が大きく上昇しているためです。11月と12月の速報時に私のnoteで書かせていただいたように、前年と今年の調査対象が異なることなどが影響するブレが一因と考えられます。12月は速報、確報ともに特別給与は0.5%増でしたが、1月の確報がどうなるか、注目したいと思います。

共通事業所ベースでは3ヵ月連続2.0%増

 一方、前年同月も当月も調査対象となった事業所(共通事業所)のみを集計した結果を見ると、11月から1月まで3ヵ月連続で現金給与総額は2%上昇しています。安定した伸びが続いているとい評価できますね。
 一般労働者に限っても11月(1.8%)→12月(1.9%)→1月(2.0%)と安定した伸びです。この動きが今後も続いていくかどうかが、実質賃金上昇率がプラスに転じる鍵を握りそうですね。

一般労働者の所定内給与も安定した伸びが続く

 このように、就業形態計の現金給与総額の動きには様々なノイズが入ってきます。ですので、毎月書かせていただいているように、一般労働者の所定内給与の前年同月比上昇率と、パートタイム労働者の時間当たり所定内給与(時給)の前年同月比上昇率のチェックが基本と思われます。
 2024年1月の一般労働者の所定内給与の前年同月比上昇率は1.6%でした。2023年7月に2%に乗せて以来、1%台後半の伸びが続いています。4月以降に、これが2%台に乗せていくかどうかが注目されます。
 一方、パートタイム労働者の時給上昇率は前年同月比3.7%と高めの伸びが続いています。


#日経COMEMO #NIKKEI

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