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政府見通しの観察、「ゲタ」に注意

 今朝ほどアップさせていただいた以下のnoteの続きです。

 年度の成長率を評価する際、「ゲタ」に気を付ける必要があります。リーマン・ショックや今回のコロナ禍のときのように、実質GDPが急激に落ち込んだり、急回復することで翌年度の成長率に影響を与えてしまうのです。

 典型的な例は2009年度の成長率です。マイナス2.4%と2008年度のマイナス3.6%に続いて2年連続で大幅なマイナス成長となりました。しかし、2009年度内の各四半期の実質GDP成長率(前期比)は、4~6月期の2.0%から、0%、1.2%、1.1%とほぼ一貫してプラスだったのです。年度内を通じてプラス成長なのに、年度成長率がマイナスという不思議な現象が起きるのは、リーマン・ショックによって2008年度後半に実質GDPが急激に落ち込み、2008年度の最終四半期(2009年1~3月期)の実質GDP(季節調整済み・年率)が、2008年度の実質GDPを下回ったためです。これをマイナスのゲタといいます。

 逆に、今日の日経で高めの成長率の一例として挙げられた2010年度は、プラスのゲタで3.3%と高めになっています。年度内の実質GDP成長率(前期比)は、4~6月期の1.2%から、1.8%、マイナス0.8%、マイナス1.1%と失速しているのです。2020年度の成長率が戦後最大のマイナスとなったのも、以下の記事で書かせていただいたようにマイナスのゲタの影響があります。

 こうしたゲタの影響を除いて各年の成長率を評価する方法として、各年の年度末(1~3月期)の実質GDPの前年同期比に注目する方法があります。前年の1~3月期から年度内の各四半期の実質GDPがどれだけ増えているのかに注目するので、年度内成長率とも呼ばれます。

 以下のグラフは、1995年度以降の年度成長率と年度内成長率を比較したものです。年度内成長率でみると、この期間で断トツに大きいマイナス成長は2008年度、最も高いのは2009年度になります。戦後最大のマイナスと言われた2020年度も、2019年度と並んでマイナス1.8%でした。

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 では、この年度内成長率で今回の政府経済見通しを評価するとどうなるでしょうか?政府が四半期ごとの成長率をどう見込んでいるかは外部からはわかりませんので、予測期間において年度内の四半期ごとの成長率は一定と仮定し、公表される年度成長率になるように推移を描いたのが下記の図になります。

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 今年7月の年央試算のときは2021年度内の各四半期の方が高め(前期比0.7%平均)で2022年度は減速(同0.45%平均)する形になっています。これに対し、今回の政府経済見通しでは2021年7~9月期のマイナス成長の影響で、年度後半に高めの成長率(前期比1.3%平均)を見込んでも、2021年度の成長率を2.6%下方修正せざるを得なかったことがわかります。一方、2022年度は減速(同0.7%平均)するものの、プラスのゲタのおかげで年度成長率は3.2%になる見通しです。

 以上の通りに各四半期が推移する場合、2021年度の年度内成長率は2.2%、2022年度は2.8%と見込まれます。95年度以降でみると結構高めですね。2021年度、22年度とも果たして見通し通りになりますでしょうか?

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