見出し画像

季節調整値でみると経常黒字は2ヵ月連続で減少~2024年6月の国際収支

 本日(8日)、2024年6月分の国際収支統計が公表されました。日経電子版は1~6月累計で経常収支黒字が大きく増加したことに注目しています。本稿ではいつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきたいと思います。


6月は第一次所得収支の黒字幅が縮小

 6月の経常黒字は季節調整値でみると1.8兆円。2ヵ月連続で減少しました。2024年5月(2.4兆円)からの黒字減少には貿易収支以外のすべてが寄与しましたが、最も大きく寄与したのは第一次所得収支の黒字縮小(5月:3.4兆円→6月:3.0兆円)でした。
 一方、原数値は前年同月と変わらず。5月の前年同月差(0.8兆円)から縮小しました。貿易収支の前年同月差が若干拡大(5月:0.1兆円→6月:0.2兆円)したものの、第一次所得収支の前年同月差がマイナスに転じ(5月:0.5兆円→6月:▲0.2兆円)、サービス収支の前年同月差が縮小(5月:0.2兆円→6月:0.0兆円)しました。

輸出、輸入金額ともに前年同月差は縮小

 貿易収支の前年同月差が若干拡大したのは輸出の前年同月差のプラス幅が縮小(5月:8785億円→6月:5100億円)した一方で、輸入のプラス幅の縮小(5月:7876億円→6月:2817億円)がそれを上回ったためです。
 実質輸出を確認すると、6月は5月から増加しています。ただし、前年同月比でみると1.0%減。実質輸入も前月比は増加したものの、前年同月比でみると0.4%減。実質ベースでは輸出の方が前年同月比でみた減少率が大きいにも関わらず、金額ベースでは輸入のプラス幅が輸出より少ないのは、輸出入価格の影響かと思われます。
 交易条件(輸出物価÷輸入物価)を確認すると、契約通貨ベース、円ベースともにわずかながら5月から改善していました(ほぼ横ばい圏内ですが)。
 貿易統計で通関輸入金額の前年同月比を確認すると、5月の9.5%増から6月は3.2%増と縮小しています。寄与度の変化をみると、鉱物性燃料(5月:1.4%→6月:▲0.5%)、食料品(5月:1.3%→6月:0.2%)の縮小が目立ちます。

第一次所得収支の前年同月差は4ヵ月ぶりのマイナス

 第一次所得収支の前年同月差が2024年2月以来のマイナスに転じた主因は証券投資収益の前年同月差がマイナスに転じたこと(5月:4153億円→6月:▲2605億円)です。日経の記事にあるように1~6月でみれば経常黒字拡大の立役者のようですが、6月単月でみると、むしろ縮小要因でした。
 証券投資収益の前年同月差がマイナスに転じたのは、受取の増加(前年同月差:1306億円)を支払いの増加(同:3912億円)が上回ったためのようです。海外投資家への配当金支払が拡大したためのようです。

その他サービス収支の赤字が拡大

 サービス収支の前年同月差が縮小し、若干のマイナス(▲196億円)となったのは、その他サービス収支(知的財産権等使用料収支を除く)のマイナス幅が拡大したことが主因です。5月は拡大していた知的財産権等使用料収支の前年同月差も縮小しました。
 その他サービス収支の前年同月差の内訳をみると、6月は「保険・年金サービス」のマイナス幅が引き続き大きい(5月:▲769億円→6月:▲672億円)ほか、「公的サービス等」のマイナスが大きくなりました(5月:23億円→6月:▲891億円)。日本銀行の資料によれば、「公的サービス等」は以下の項目を含むようです。

在外公館や駐留軍の経費のほか、政府や国際機関が行うサービス取引のう
ち他の項目に該当しないものを計上します。例えば、在日米軍がわが国の居住者から取得する財貨・サービスや、船会社や航空会社が寄港地で支払う公的手数料、自衛隊による海外での支援活動です。なお、在日米軍に勤務する日本人職員の給与については、こうした職員がわが国政府と雇用契約を結んでいることから、わが国政府が米軍に提供する人材派遣サービスとして受取に計上します。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?