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先月の経常収支黒字急増は幻だった?~2024年2月の国際収支

 昨日(4月8日)、2月分の国際収支統計が公表されました。今朝の日経朝刊では旅行収支の黒字が倍増したことが注目されていますが、主役はそれではありません。いつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら中身を確認していきたいと思います。


季節調整値で見ると経常収支黒字は急縮小

 2月の経常黒字は季節調整値でみると1.4兆円。急増した2024年1月から一転して縮小しました。2024年1月(2.7兆円)からの黒字縮小に最も寄与したのは第一次所得収支の黒字縮小(1月:3.6兆円→2月:2.7兆円)。貿易収支の赤字が拡大した(1月:▲215億円→2月:▲0.7兆円)ことも影響しています。日経朝刊が注目しているサービス収支は0.3兆円の赤字で横ばいでした。
 一方、原数値の前年同月差をみると0.4兆円のプラス。2024年1月からの変化を見ると、貿易収支の前年同月差の縮小(1月:1.7兆円→2月:0.3兆円)が最も影響しています。貿易収支の前年同月差は2023年4月以降プラスを続けています(赤字が前年同月に比べて縮小)が、これが続くのかが気になるところです。第一次所得収支の前年同月差が2ヵ月ぶりにマイナス(1月:0.7兆円→2月:▲0.1兆円)になった(黒字が前年同月に比べて縮小)ことも影響しました。サービス収支の前年同月差は変わらずでした(1月:0.2兆円→2月:0.2兆円)。

輸入の前年同月差が2023年3月以来のプラスに

 貿易収支の前年同月差が急縮小した主因は、輸入の前年同月差が2023年3月以来のプラスになったことにあります。2023年4月以降、輸入が減少することが貿易収支の赤字縮小(前年同月に比べて)に寄与してきましたが、そうした追い風が終わったわけです。
 財別の動向がわかる貿易統計で、輸入の前年同月比の減少幅が最も大きかった2023年8月(17.7%減)と2024年2月(0.5%増)への変化(プラス18.2ポイント)の内訳を確認してみましょう。最も寄与が大きいのが鉱物性燃料(プラス7ポイント)で、原料品(プラス2.1ポイント)が続きます。原油など資源価格の反転上昇が影響していると考えられます。価格要因を除いた実質輸入の季節調整値を見ても、2月は1月に比べれば増えているものの、2023年の水準には届いていません。
 その一方で、実質輸出は1月、2月と2ヵ月連続で減少しています。自動車関連の輸出減は確かに大きいのですが、他の財も減っています。中国の春節の影響もあるとされていますが、3月に輸出が本当に持ち直すのか要注目です。

直接投資収益の受取が減少

 第1次所得収支の前年同月差が再びマイナスになったのは直接投資収益(再投資収益を除く)の前年同月差が再びマイナスになったためです。配当金・配分済支店収益の受取が前年同月より減少したことが主因です。証券投資収益は前年同月差の増加を続けています。


旅行収支の黒字の前年同月差は大きな変化なく

 最後に、日経朝刊が注目していたサービス収支の前年同月差を確認しましょう。
 旅行収支の黒字は1月も倍増していました(笑)。前年同月差は1月のプラス2039億円から2月は2235億円と増加はしているもののわずかです。グラフを見てもわかるように、旅行収支の前年同月差は昨年からほぼ同程度で推移しています。
 その一方で根強い押し下げ役になっているのが知的財産権等使用料を除くその他サービス収支です。前年同月差のマイナスが拡大(1月:▲1365億円→2月:▲1877億円)しており、旅行収支の黒字幅拡大を帳消しにしています。内訳を見ると、「通信・コンピュータ・情報サービス」の前年同月差のマイナス幅拡大(1月:▲228億円→2月:▲748億円)の寄与が大きくなっています。 

#日経COMEMO #NIKKEI

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