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「低成長で税収増」、不思議じゃないです。増税しているから

 本日(5/28)の日本経済新聞朝刊に下記の記事が出てました。低成長なのに税収増なのが不思議だという趣旨です。本当に不思議なんですかね?


2020年度は消費税の増収が税収増に

 記事では、2020年度の税収がマイナス成長であるにもかかわらず、60兆円と過去最高であったことを指摘しています。ということで、各年の租税・印紙収入の推移と所得税、法人税、消費税の寄与を示してみました。
 記事が「不思議」と言っていた2020年度。租税・印紙収入4.1%増の寄与度分解をすると、所得税は0%、法人税は0.7%、消費税は4.5%でした。2019年10月に消費税率が10%に引き上がったことで、名目成長率と連動しなかったのではないでしょうか?記事で一生懸命説明している法人税の寄与はゼロではないですけど、寄与は大したことないですよね?
 さらに言うと、2020年度、2021年度ともに、補正予算段階の経済見通しより実績の成長率が高いこと(マイナス幅が小さい)を踏まえると、補正後段階で見込んでいた税収を決算が上回っても、何の不思議はありませんよね。

財務省の税収見通しに下方バイアス

 さらに記事では、「22年度の税収総額はさらに伸びる。23年3月末までの累計値は54.7兆円と、前年同期より1割近く多い。政府は当初予算段階で65.2兆円と見込んでいた。22年11月に補正予算を編成した時点で68.4兆円に上方修正したが初の70兆円超えが見えてきた」と書いている。しかし、1990年代以降、政府の税収見通しは下方バイアスをもっていると思われます。
 下図のように、決算ベースの租税・印紙収入を示す折れ線グラフより、当初予算の伸び率(赤い■)、補正後予算(水色の※)が下回るケースが多々あります。2022年度もそうなるのでしょう。

政府経済見通しより厳しめな税収見通し

政府経済見通し(名目GDP成長率)との関係をみると、税収見通しの堅さがわかります。政府経済見通しを無視しているんじゃないかと思える勢いです(笑)。
 政府経済見通しの当初見通し(翌年度の見通しを策定する段階)を実績が下回っているのにも関わらず、税収の決算値が当初予算を上回るケースは、1961~2021年度の61年間のうち16回もあります(表の黄色部分)。2011年以降に限っても7回あり、2021年度もこのケースに当てはまります。
 2022年度の政府経済見通しは名目GDP成長率で3.6%、これに対して実績値は1.9%。2022年度も黄色の部分に当てはまりそうですね。

 上記の分析は、1年近く前にアップした下記の論考をアップデートしたものです。せめて、日経の記者様がこの論考を読んでいていただけていたら、と思います。

#日経COMEMO #NIKKEI


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