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夢の話をしようじゃないか

突然ですが皆さんの夢はなんですか?
実はわたくしはあまり考えた事がなかったのです。
幼い頃は「お母さん」になりたいと思っていました。
ですから、ある意味ではすでに夢は叶っているとは思いますが、ここでの「夢」とは仕事や趣味など情熱を持って取り組んでいる事に関して沢山努力をした末に達成したいゴールのことです。

若い頃からとにかく目の前の事を一生懸命にやり続けていたらここにきていたという感じだったので、こと仕事においては、そういった明確な目標を掲げた事がありませんでした。
ところがそんなわたくしに最近、ささやかな夢ができました。
かなり自分勝手な夢だなぁとは思いつつ
「夢は言葉にした方がいい」って聞くから
大の大人だけど恥ずかしげもなく

“夢の話をしようじゃないか”

今回はそんなお話。


・夢がなかった若手時代

志し高くキャリアをスタートさせた方々にはやはり
「いつかこんな仕事をしてみたい!」みたいな具体的な夢があったりしますよね。
思えばわたくし、そういった「憧れ」みたいなものがなかったんです。
「あのコンペで大賞とりたい!」とか
「あの雑誌で表紙を飾りたい!」とか
「絵本作家になりたい!」とかね。
とにかく絵を描くお仕事であれば何でもありがたいと思っていたのでこちらから望むなんて事考える、いとまも無かったのです。

40を過ぎてふと半生を振り返りました。
仕事面だけでなく、わたくしはいつも流れに逆らわず流されるままに、ただひたすら目の前の事に必死に、生きてきたなぁと。
若い時分から自身の事は二の次三の次にして
時々目の前にドンと置かれる課題を甘んじて受け入れてきた、そんな人生だったなぁと。
まぁ自ら選んだ訳でなくとも最終判断は全て自分でしてきたのですから、もしこのまま人生を終えても多分、後悔する事はないと思う。
ただもし今、自分が死んだら「トウドさんの残したものはこれです。」という事になる。そしたら
「いや、それは違う。わたしまだできることあったの…」と思うだろうな。そしたらわたし成仏できなそう。
やはりできる限りのことはやらねば。
あれ?成仏の為みたいになってるけど(笑)
そんな風に思いながらお仕事を続けてきた。
この数十年でした。

・金言を頂いた

ある方に、金言を頂いたのです。
「あなたはアーティスト。今後はサイズもスケールも大きな仕事がやってくる。(具体的な金額)位稼げるの人になる。」と言って頂きました。
それはあまりにも突拍子もない数字だったので
わたしと夫の間ではいまだにネタになっているのですが(笑)
その方には他にも沢山沢山、具体的なアドバイスを頂戴していて心から感謝しています。
わたくし本来は、占いなど信じないというタイプ というか、占ってもらってもすぐ忘れちゃうタイプで(笑)
例えば、たまたまテレビなどで「今日の◯◯座の運勢」みたいのを目にしてもそれを1日覚えている事ができない。つまり関心がないのでしょうね。
だのに、その方の仰る事はすっと心に入ってきて、いつまでも心に残るのでした。
何故でしょう。
お慕いしている方から言われたからなのか
それともわたくしにとって都合のよい内容だったからなのか…

正直申し上げますと、今のところその方の仰るような未来の兆しは全っっく見えてきません。(笑)
想像すらつかない。
ただ、なんとなく今までの自分のイラストレーターとしての人生の流れが変わりつつあるのは事実だと思う。
今は期待より不安の方が多いのですが
その流れの変化、そして頂戴した金言が次の出来事と繋がった時、わたくしの中で何かが弾けたのでした。

・点と点が線で繋がる時


時を同じくして、親しい編集者さんから心の内を打ち明けられます。

「会社、辞めようと思ってる。」

衝撃的であったことは否めません。
でも正直「ついにか…。」という思いもありました。
若い頃ならばまだ、彼女が会社を(編集者を)辞めてしまったら寂しいと思っていたけれど、今は
「そうだね。今までいっぱい頑張ってきたものね。ゆっくり休んで。お疲れ様」
と言ってやりたい。そう思うようになっていました。

同い年の彼女とは彼女が新卒で入社した時からのお付き合い。
長い長い年月をかけて、いつの間にか悩み事や、家族の話、色々な事を打ち明けられる仲になっていました。
そんな付き合いの中でわたしが初めて彼女に仕事の悩みを相談した時、忙しい最中休日に呼び出したにも関わらずボソッと「わたしもそういう事(仕事の)相談してくれて嬉しいと思ってるし」と言ってくれたのでした。

わたしにとっても、掛替えのない存在である彼女からの一言。
胸が締め付けられるような思いでした。
わたしと違い優秀な彼女は若い内から出世して、重責を担い、潰れそうな心を自ら鼓舞し、乗り越えてきた。
その姿をずっと、ずっと見てきた。

揺れる電車の中、まるで通夜のように2人並んで今後の身の振り方を話していました。

「しばらくは何もしたくないけれど、スキルもあるし、ボケない程度には仕事したいなとは思ってる。」

そう語る彼女の傍らで、わたくしは1人何かに打たれたかのような衝撃に見舞われ不意に

もし、あなたが会社を辞めた後、わたしが本当に(具体的な金額)稼げるようになっていたらマネジメントやってくれる?!」


そんな言葉が口をついて飛び出したのでした。
本当に自分の意思とは関係なく「不意に口をついて飛び出した」のです。
本当に突飛な申し出だったと思うし、冗談だと思われたかもしれない。
「何言ってんだ。この人」って思われても仕方ないくらい突拍子もない事を言ったと思う。
何を隠そう発したわたし自身が一番驚いているんだから。
でももう、わたしも彼女も、冗談みたいな人生ですら受け入れられる程追い詰められていたのかもしれない。

わたくしの勢いに少し戸惑いつつ「うん。いいよ。そういうの苦手じゃないし。」と言って笑ってくれた。

涙が出そうになるのをグッと堪えて、わたくしは不安の中にうっすらと明かりが差すような感覚を味わいました。
二人とも不安しかなかった。けれど逆にもうこれ以上手放すものもないように感じていたのです。

フリーランスなど所詮一寸先は闇。

安定などない浮草家業。
不安には慣れていると思ってました。

でももし彼女が一緒にいてくれたら?
わたしはこの人以上に信頼できる人と今後出会えるだろうか?
今なら家がご近所なのも奇縁に思える。
わたしの稼ぎを半分こしたって余りある程の安心や幸せがそこにはある。
これ、わたし「夢ができた」と言ってもいいのではないか?初めて夢ができたのではないか。
具体的なやりたい事とかでは無いけれど
「彼女と共ににお仕事をする。そのためにお仕事いっぱいがんばる。」
うん。これ十分夢と言えるのではないだろうか。

彼女からしたら迷惑な夢かもしれない。
彼女はしっかりしているし、わたしなどが
心配するには及ばないと思う。
でも少なくとも今までより気楽で楽しい仕事ができるのでは?

初めて「夢」ができて、ようやくわかったような気がする。「夢」って、それがあるから頑張れる「よすが」のようなものなんだ。

・歩みだしてゆく

先日、我が家に来た彼女の口から
「辞表出してきた」
と聞きました。
その重責から会社への影響など色々考えて早めに出したものの、親しい同僚にも打ち明けられなかったのだとか。
「今ここで話して少しすっきりした。」
そっか。着々と次のステップに進んでるんだね。
わたし、今まで大変だった分、あなたに楽をさせてあげられるように頑張るね。
なんだかプロポーズみたいになっちゃったけど。
初めて「この為にがんばりたい!」と思えたんだ(涙)
だから勝手な夢かもしれないけど付き合ってね。

今は子供達の事に時間を持っていかれ過ぎていて、なかなか思うような活動ができず内心焦りを感じる日々ですが、60歳まで働くと考えたってまだまだ時間はある。
できることをコツコツ積み上げる。

いつかその自分勝手な夢が叶うように。

大それた夢だということは重々承知の上で、わたくしは言葉にすると決めました。

この記事を書き始めたのは実は7ヶ月も前。
書いては消して、書いては消しての7ヶ月。
言葉にするのは本当に勇気がいる。
もしも叶わなかったら恥ずかしいから?
でも叶う見込みのあるものだけを夢じゃないでしょう。

だから大の大人だけど恥ずかしげもなく

“夢の話をしようじゃないか”


TOUDO YAYOI Illustration 


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