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10/30~11/5

・自動販売機に肘をあててもたれかかる女性。
きっと何かドラマの撮影なのかもしれない。絵になるような服の色だった。強いていうなら探偵もの。たぶん米倉涼子だった。うん、きっとそうだ。たっかいヒールを履いていた。うん、きっと履いていた。


・赤いスポーツタイプの自転車に乗る久しい友。
久しぶりに君のことを見かけた気がする。後ろ姿で断定して不躾だとは思うが許してくれ。お前の寝癖が俺にお前だと叫んでいたんだ。お前が悪い。あの頃からついた寝癖を風に乗せる癖は変わっていないようで安心したよ。なんだか近々目の前から会えそうな気がする。そのときは乾杯しよう。


・電車のホームでストレッチポールを使う男。
物干し竿のような長細い棒を背中に通して肩のストレッチをしている。右へ、左へと身体を傾けてはきっと声を漏らしているのだろう。傘でゴルフの練習をするおじさんはたくさん見かけるのだが、ストレッチポールマンは初めて見た。家まで待てないほど身体が凝っていたのかもしれない。その逸ってしまう気持ちは何だかわかる。幼い頃に買って貰った竹とんぼを家まで待ち切れずに飛ばしながら帰っていたら、木に引っかかって落ちてこなくなってしまったことを思い出した。


・吊革を雲梯のように使って電車内を縦横無尽に移動する人。
猿かと思った。一個飛ばしも軽々こなすその姿はまさに猿だった。テナガザル。大きな手だった。吊革が小さく見えるくらい。足は地面についていて、腕と連動して動いている。彼は揺れる車内をゆっくりと前進していく。駅に着くと、彼は電車の外へと飛び出す。彼は足が悪かった。電車を降りた彼は翼をもがれた天使のようにホームのベンチに座った。

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