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かぞかぞ⑨子離れ…成長。バラバラになりました。でもずっと家族です。

「母と息子」「子離れ」「成長」などが軸となった9話、絶妙の回でした。大久Dをはじめ、大久組の面々、出演者の志の高さをヒリヒリ感じました。素晴らしいかったです!特に坂井真紀👏👏堪りません

笑いが一番の感動や!」という明石家さんま師匠の言葉が大好きな自分にとって、感動フィーチャードラマにせず、笑いと交互に持ち出してくる大久演出の味が堪りません。9話までみて、大ファンになっています。実際、毎回、ドラマの感想を書くなんて生まれて初めての経験です。ボクが知る中で今、ナンバー1の演出家だと思います。それぞれ、持ち味が異なるので、順番に意味はないとも言えますがナンバー1だよ!って言いたくなるんですw

「岸本七実サイン会」での、ファン2人とのやり取りや昔仲良しだったアサヒ君との再会時の老眼ネタや「ええ枯れ方しとんやん」ってセリフ(笑)や二階堂(古館寛治)、小野寺(林遣都)との距離感、先生のあしらい方や、何気ない部分の河合優実の上手さには舌を巻く。そして、9話ともなると「チームかぞかぞ劇団」のチームワークは絶品になっていますw。

林遣都 
ホント、いいですよね!あそこまでオモシロ演技(甘栗絡み、二階堂絡み、コンビニでの一連)をやり倒されると、ボクはいつもは嫌になっちゃうんですが、林遣都は別格。単にオモロい!ってなります。それは演出テイストとピッタリ息が合ってることもありますが、彼の持つ「品」もデカい。なんせ、「品」ってやつは、稽古したり、努力したり、お金出したりして備えられるモノではなく「持って生まれ、磨きをかけ」ないと手に入らないですから。彼の演技の質も「やってます感」「ボク面白いでしょ?感」が皆無。実に良い役者です。何故かいいなぁと思う役者がスターダスト所属の傾向が強いです。夏帆、仲野大賀、新木優子、柳楽優弥、濱田岳、北村匠海、横浜流星、山﨑賢人、永野芽郁、、余談でした。甘栗が食べたくなってきましたw

【コンビニ】
酔っている小野寺、斉藤(椛島光)、二階堂、3人で飲んでいる。
斉藤「何で親って子供に執着してしちゃうんだろうか?」
小野寺「目に入れても痛くないほど可愛がって成長した我が子の成長した姿を、喜ぶ気持ちと、寂しく思う気持ちの修羅。子離れをテーマにした文学作品は多々ありますからね
斉藤「ふーん、ま、子供のいない我々がこんな話しても空虚なだけですけどね」
小野寺「子供、という立ち位置からの発言なら出来るでしょ?君も俺も親から生まれてきたわけで、家族という族に属しているというわけで」
斉藤「ふふふ、小野寺さん、酔っぱらうといつもよりちょっとだけまともですね」
小野寺「家族、この族はもう、どんな族よりも文学してますからねぇ。オレも、はは、子育てして、家族にまみれて、文学してえ~」
斉藤「文学文学うるせえなぁ!」
小野寺「はい、甘栗。(大声で)アレ?甘栗が切れましたぁ!すみません!この店に、甘栗ありますか?(席を立ち店内を物色)」
二階堂「うるさい、うるさい」
小野寺「栗っクリクリクリ、ぐりっ栗クリクリ(見つけて)」
飛びつき
小野寺「ムムムムム!関西限定!!」
二階堂「(栗を奪って)これ買いましょう、ここでクダ巻いてないで出ますよ!(と、レジへ)」
斉藤いつの間にか二人をビデオ撮影している
小野寺「子育てしたいなー、ね、二階堂さん、子育てしたいでしょう?」
二階堂「ああ、もうしましたから」
小野寺「え?」
二階堂「前の妻との間に2人、息子と娘、もう2人とももう社会人です」
小野寺「・・・(メチャデカい声で叫ぶ)ええええーーーっ!」
二階堂「うるさいなー」
小野寺「あんた、ホント何でも持ってやがんな!
二階堂「(店員に)ありがとう。小野寺さん、確かに子離れは文学ですよ(と、小野寺を見つめて)ふふっ(と、去る)」
固まっている小野寺の後ろ姿

かぞかぞ⑨

当然だが「悲しいことを悲しいままに」「楽しいことを楽しいままに」表現すると身もふたもないし、ちっとも面白くない。だから、このコンビニ場面のように、工夫してあると、活き活き楽しめるし、内容もスッと入っていくし伝わりやすい。演者たちも面白がって演じる。いいこと尽くめだ。そう、ポジティブスパイラル👏

草太の一人暮らし
草太が、家を出て一人暮らしを始めようとしている。一緒に暮らしていては生活が成り立たなくなってくる。草太のためにも必要な変化だ。頭では理解していても、母親のひとみには、息子との別離は断腸の想いなのだ。

一人暮らしをする草太を見送るひとみ

【産婦人科 病室】
看護部が赤ちゃんの草太を、新生児室へ連れて行く
看護婦「ママパパ、またねー」 
耕助「またねー」
見送るひとみ、耕助
ひとみ「・・・あんなかわいいのに」
耕助「ひとみ」
ひとみ「障害のないからだで産んであげたかった・・・」
耕助「・・・」
ひとみ「あの子、大丈夫やろうか」
耕助「大丈夫や」
ひとみ「何が??何が大丈夫やねん、学校行ったら虐められるかもしれん」
耕助「俺らが守る」
ひとみ「学校かて、行かれへんかもしれん」
耕助「大丈夫」
ひとみ「何が?」
耕助「俺らの子やぞ!」
ひとみ「だから何?」
耕助「・・・なんやねん」
ひとみ「・・・(涙うかべて)」
耕助「・・・」
ひとみ「・・・私らが・・・死んで・・・あの子、独りぼっちになったら、どうせい言うん・・・(すすり泣く)」
耕助「・・・(言葉がない)」

さめざめと泣くひとみに、ティッシュを渡すが跳ねのけられる

耕助「・・・(言葉なく、ひとみを見つめる耕助)」

ずっと泣き続けるひとみ。
かける言葉もみつからず、静かに部屋を立ち去る耕助。

かぞかぞ⑨


錦戸亮が病室に一緒に居る、それだけで安心感がふわっと漂う。文字起こししただけではこの場面の素晴らしさは到底、伝わらない。坂井真紀、錦戸亮二人のやり取りには、きつく胸を絞めつけられる。セリフのない時間の眼差しや想いのやり取りが切なすぎて素晴らしいのだ。無言の見つめ合いの時間は雄弁で様々なセリフが聞こえてくるようだ。見事。みてない方は、ホント是非とも見てほしい。

【夜の道】
独り歩く耕助の足元
耕助「だいじょうぶ だいじょうぶ だいじょうぶ」
と歩いてゆく
【草太の新居】
夜明け前、独り、部屋を出る支度をする草太
【夜明け前の路上】
草太、独り歩いてくる
【夜明け前の一本道】
独り歩く草太。歩いていると、横に耕助が現れて、一緒に歩く

草太「パパぁ」
耕助「なんや?」
草太「この道で、ええ?」
耕助「この道で、ええで」
草太「ボク、おうてる?」
耕助「おうてるで」
草太「パパ?」
耕助「なんや?」
草太「ボク、まちがって、ない?」
耕助「・・・(何かこみあげてくる耕助)まちがって、ないで・・・(こみあげる気持ちを押さえながら)うん・・・草太は、ずーっと、おうてる」
草太「はい」
耕助「そのままで、ずーっとおうてる」
草太「はい」
耕助「これからも、ずーっと、ずっとおうてる」
草太「はい」
耕助「ハイ」
草太「はい」
耕助「・・・(かすかにうなずく)」
草太「パパぁ」
耕助「ぅん?」
草太「いままで、ありがと」
すっと画面から消える耕助
独り歩く草太の顔つきは、明らかに成長している
そして、地平線から太陽がのぼってくる。
夜明けだ。独り歩いてゆく草太の後ろ姿。

かぞかぞ⑨

錦戸亮、吉田葵、2人の名演技。ワンカットで、見事に演じ切っている。夜明け前設定なので良き明かりの時間帯は限られているため、このカットは本番1発狙いだったかもしれない。正面2ショットと、ヨリのカメラ2台とかで。台詞は少ない。しかし、この場面に至る心情のレイヤーが色々あるのでその部分が更に大切な撮影だったと思う。錦戸亮は、耕助の演技を超え、草太・葵君の成長をも感じ、気持ちが更に昂ったようにも見える。何気なく、シンプルなセリフの場面は、役者として実に演じ甲斐がある。うまくいった時の達成感は、役者冥利に尽きる。正にその手応えを感じた場面に違いない。そして、このワンカットの成功を最も喜んだのは、錦戸さん、葵君でも大久監督でもなく、葵君担当の俳優・安田龍生さんだったのではないだろうか?これは、ボクの想像に過ぎないけれど、そう強く感じたワンカットでした。かぞかぞからは、そんな撮影時の温度感も画面からよく伝わってくる。ほんと、素晴らしいドラマだ。

【追記】
とは書いたが、この場面を書いたのは大九Dだったとのことがわかりました。これが撮れた時の彼女の達成感、幸福感を思うと鳥肌ものです。

今までリンゴジュース買うてくれてありがとう

母ひとみが草太の髪を切る、その様子をみている七実。この場面も沁みる。コンビニのシーンも草太の成長を表している。
草太「買ってあげる。今までリンゴジュース買うてくれてありがとう。お礼です」
ひとみ、七実、ありがとう、と喜ぶ。
「またお願いします」と3人を見送る店員2人の眼差しも暖かくてステキだ。見逃しそうな部分をキチッとサラっとみせてくれる。
そして、草太は

草太「ママ、大丈夫です」
ひとみ「草太」
草太「ボクはママの子供です」
ひとみ「草太」
草太「ボクは大人です」

かぞかぞ⑨

と独り暮らしの部屋に向かう。

と、しっとり終わらないのがかぞかぞの良いところ。
マルチの登場。バイト先での先生ネタ。
ALL WRITEでの七実✖小野寺の甘栗コント。
マルチが金魚のお届け物。など
で、軽い気持ちにしてくれる。

そして、二階堂P 渾身の岸本家ドキュメンタリー番組「家族の流儀」の放送とともに、ずっとなくなっていた引き出しの取っ手を見つけるひとみの点描などあって。

草太「ボクとパパとママと七実ちゃんとばあちゃんはバラバラになりまし  た。でもずっと家族です。ボクの家族」

坂道をのぼったところで皆が一緒になる。

七実「私の家族。わたしの家族」

来週、最終回ってのが実に残念です。こんなにもハマったドラマはなかなかないので、ここまでみられただけでもホント幸せです。全10話、10時間かけて描いてくれる映像作品って、なかなか無い。映画では無理。Netflix、アマプラ、Disney、U-Next、Apple TVなど沢山サブスクはあるけれど、この「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」と出会ったおかげで、テレビドラマってやっぱり面白いし、週一の放送を待つ喜びを思い出させてくれた。ありがとう!あと1回、楽しみでなりません。

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
【出演】河合優実/岸本七実、坂井真紀/ひとみ、吉田葵/草太、錦戸亮/耕助、美保純/大川芳子、福地桃子/マルチ(天ケ瀬環)、林遣都/小野寺、山田真歩/末永、古館寛治/TVP二階堂、椛島光/斉藤 ほか 草太担当:安田龍生
【原作】岸田奈美 【脚本】市之瀬浩子 【演出 脚本】大九明子



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