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『神々の指紋』感想文とか その2

前回は概要および読むに至った経緯について書きましたが、今回は感想を書いてまいります。


大雑把な感想

この『神々の指紋』、ざっと読んだ大雑把な感想としては以下の通り。

まず全体的な感想。

  • 上巻は良作、下巻は…

  • 思わせぶりは止めてもっと簡潔に書いてほしい。ダラダラした文章で読んでいてしんどかったため、斜め読みになった所多々あり。

  • 「ピリ・レイスの地図→ビラコチャを巡る中米の旅→歳差運動等に関する考察→エジプト旅行→南極大陸文明論」という流れなのだが、各々のつながりが薄くて「なんでそういう風に話が進むの?」と違和感を覚える。

  • 中米とエジプトの2箇所だけで「南極大陸文明だよ!」はいささか無理があるだろう。

  • 「バベルの塔の話はパクリ」「ノアの箱舟の話はパクリ」とかいって旧約聖書に対してストレートに書いているのは好感が持てる。

  • コンキスタドールの悪行についても述べているのは好感が持てる。

  • 「南極大陸の超古代文明がいつ発展し、いつ滅び、いつ伝播したのか、各国の文明がいつ誕生したのか」を示す時間軸くらい載せてほしい。文章だけだと分かりにくい。

  • なんだかんだ言って、『神々の指紋』のCDを聞きながら読むと雰囲気バツグンであった。

お次は上巻の感想。

  • 上記の「つながりが薄い」と同じだが、ピリ・レイスの地図を見た後に著者はなぜペルーに向かったのか、唐突すぎて分からない。(まぁ私も急に「タフが読みたい」となって本書に出会ったので、そんなものかもしれない)

  • ペルー→ボリビア→メキシコといった旅行は、著者の足跡をGoogleマップで辿ると非常に面白い。旅行記としては優秀で、ここだけでも読む価値あり。

  • 旅行後の歳差運動等に関する考察は、下巻のピラミッド後に回した方がよかったんじゃない?

最後に下巻の感想。

  • 下巻の3分の2が「ピラミッドすげー」「スフィンクスすげー」であり、いやもっと手短に書けよと思ってしまった。ずっとエジプトなので、旅行記としてもその辺の旅行ブロガーの記事と変わらない。

  • その「ピラミッドすげー」が終わったラスト3分の1、50章からこれまた唐突に「失われた文明は南極大陸にあったんだよ!」と始まり、なんのこっちゃとズッコケてしまう。

  • 「21世紀頭に大災害により文明が破壊される!」が本書の言いたいことだとして、一体どうしたいのか分からない。大災害に対してはどうしようもないのだけど。

ビラコチャを巡る旅

大雑把な感想としては以上なのですが、やはり本書の白眉は上にも書いた通り、ビラコチャを巡る中米旅行の箇所でしょう。

※ビラコチャ:中南米に文明を授けたとされる、白くて顎髭のある長身の神。
ピサロやコルテスが侵略してきた際、容姿が伝説のビラコチャにそっくりだったため、簡単に侵略されてしまったというのはよく知られたエピソード。

寝食を忘れて本当に集中して読んでしまいました。あれほど集中したのは何年ぶりか分かりません。

しかしよく考えてみると、この箇所が面白いと思ったのは、ネットが充分に発達して現地の様子や文明の跡を調べながら読めるからで、ネットが未発達な1996年に読んだら同じ感想を持ったかは疑問であります。

あと私が「古代メキシコ展」に行っていた、というのもあるかも。

「古代メキシコ展」の年表。
本書でも出てきた場所の名が沢山。
ただし本書的にはこの年代で合っているのかは怪しいとのこと。
パレンケから出てきた「赤の女王」
太陽のピラミッドから出てきた「死の石版」
手前から「球技プレイヤー土偶」「球技用の防具」「ゴムボール」。
本書には「敗者は生きたまま内臓を引きずり出される」とか物騒なことが書かれていた。
ケツァルコアトル。本書ではなんかビラコチャと同一視されていた。

これを当時の弟はどうやって読んでいたのかと思ったのですが、確か地図帳を常備していたので、いちいち地図帳で調べながら読んでいたのでしょう。あとは古代メキシコについて図書館で調べていたとか。
ご苦労なこった!

あと関係ない話ですが、この「古代メキシコ展」よりも中之島美術館で開催されていたクロード・モネ展の方が盛況だった、チケット屋でも売り切れ続出だったというのはどういうことなの…

一個人の絵よりも失われた文明の遺産の方が断然面白いやろお前ら一体何考えてんだと思ったのですが、やれ生贄だドクロだ人間の皮だというのは受けが悪いんかな。

アステカ文明の装飾ドクロ
同じくアステカ文明のシペ・トテック神頭像。
シペ・トテックの解説文。
やだ怖い~><

※この私の文章にたまに出てくる「やだ怖い~><」という言葉は、「敏感ふとまら君」という教育ビデオが元ネタとなっているので興味ある人は履修するように。

だがその他一切のことはわかりません!

そんな感じの旅行記なのですが、面白いのは

ナスカ→マチュピチュ→チチカカ湖→ティアワナコ→チェチェンイッツァ→トゥーラ→チョルーラ→トレスサポテス→サン・ロレンソ→ラベンタ→ビヤエルモサ→オアハカ→モンテ・アルバン→パレンケ→ウシュマル→テオティワカン

という著者の足跡を辿ったからで、各地で書かれている内容としては、

  • これが本当に当時の技術力で可能であっただろうか!?

  • これは「ビラコチャ」として伝承されている、実在の「誰か」が教えた技術に違いない!神話ではなく「ビラコチャ」は実在した!

  • だが、ピサロやコルテスや宣教師といった「悪いものたち(コンキスタドール)」によって遺跡も資料も破壊し尽くされているので、その他一切のことはわかりません!

というチャー研の昆虫学者みたいなことばかりじゃないか。

著者は考古学者ではなくライターなので仕方ないとこあるでしょうが、もうちょっと何とかならなかったの。

あと、コンキスタドールが外道なのは揺るぎない事実なのですが、ビラコチャが親切だったかも怪しい。
案外ピサロやコルテス達と同じような事やってたりして。「神」のやることなんて大体が外道なことばかりだからな、なんてことも思ってしまいました。

以上、本書のことが言えないくらいまとまりのない文章ですが、長くなってきたので今回はここまで。

なんだかんだ言っても古代メキシコ文明は面白いので、興味ある人は調べてみてください。

現在のメキシコは怖いから行きたくないけど。



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