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コロナ禍で簡易マスクを売った話

2020年4月から販売した中国製の50枚入り簡易マスクの在庫についてですが、実はまだまだ沢山ございます。
赤字価格である半額に値段が下がった簡易マスク、その後弊社のネットショップサイトにて販売を継続しておりましたが、2021年4月に販売を終了しました。

「簡易マスクの取扱いをしようかどうしようか」

そんな議論を何度もしたのは2020年2月の事でした。コロナ第一波の真っ只中です。

何故ボトムスメーカーである弊社でそんな議論が行われたかと言いますと、直接やり取りのある中国企業からマスクを輸入することが可能だったからです。
コロナの影響で売り上げが落ちており「少しでも何か売れるなら売ってみてはどうか」という議論でした。
しかしながら弊社はボトムスメーカーであり、輸入代行業者ではありません。
加えて「品質は問題ないのか」という不安や、コスト高騰に伴う価格上昇、「やめておきましょう」と何度も結論が出されていました。

そんな日が過ぎていくにつれて、比例するように地元の取引先より「マスクがないのか」という問い合わせが増えていきました。

丁度取引先の中国企業からマスクのサンプルなどが送られてきており、検査結果表を受取っておりました。また弊社社員も困ってるだろうと「使ってください」と大量の簡易マスクが送られてきておりました。タイムレコーダーのある場所に置かれている「ご自由にお使いください」のマスク。会社からマスクの支給があるというのは、この時期物凄い安心感がありました。

使っていくうちに「この品質なら」と納得した販売部で「地元を中心にうっていこう」という結論が出ました。
マスク販売について議論がなされるようになって、ひと月経った頃でした。

販売するにあたり少しでも安心してもらいたい。

中国国家基準は、クリアしてるものの、日本独自の検査等をして数値に出してみたい。
製品を世に出す前に品質検査を行います。
カケンテストセンターと呼ばれるその場所は、色々な検査をして様々な根拠を示してくれます。
そんなカケンテストセンターに品質テストを依頼しようと問合せをしたところ「6月まで埋まっています」との答えでした。
正直焦りました。

悩んでいるうちに、カケンテストセンターではマスクの試験受付中止が発表なされました。

自分達が日々使ってる物だ、何も問題はない。説明なら私の言葉で伝えていけばいい。販売にむけて最大限に安心はしてもらえるようにしよう。それでやってみよう。

沢山のマスク関連の資料を集めて、未知の領域に弊社が踏み込んだ瞬間でした。
楽天やAmazonやYahoo!に出品する販路はありましたが「地元で売っていく」という想いが強かった為、自社サイトのみでの販売に留めました。
モデルやカメラ撮影は全て自社社員にて行い、楽天やAmazon、Yahoo!などで既存商品のズボンをお買上頂いたお客様にチラシ封入なども行いました。
地元の方以外にも、弊社商品を知っているお客様にお届けしたかったんです。

販売開始したものの、反応があるのだろうか。
地元取引先の方々は喜んでくれたけれど、地元の人にいきわたるだろうか。
なんなら車に乗せて売りに行こうか。
そうだ、Twitterにて告知しよう。
フォロワーが1000にも満たないアカウントだけれど、地元の人たちが見ていてくれているはず。

そんな想いをこめてツイートをしてみました。

驚きました。

ツイートをして直ぐに、ほんとうにすぐに電話がなったんです。
フリーダイアル回線は少し音が違うので判りやすいのですが、その音が社内に鳴り響きました。

「きた!!!!」

中田くんと顔を見合わせたのを良く覚えています。

どちらが出たのか、それとも別の人だったのか、それはもうおぼえていません。けれどもコロナの影響で問屋出荷が減った為に『物言わぬ物体』になっていた電話が大騒ぎしたんです。
1つ受けて受話器を置くと、また着信が続く。
同じ新市町内の方を中心に福山市内の方々から「マスクが欲しい」というご注文の電話でした。

嵐のようでした。
後に知りましたが、地元の情報を扱う掲示板に弊社のツイートのリンクが貼られたようでした。
どなたか存じませんが、あの時リンクを貼っていただけたこと、とても感謝しております。

直接弊社の窓口にて販売出来ればよかったのですが、感染防止や対応の限界などがありました。通信販売のみでの販売でしたが、多くの地元の方々にお届け出来たこと本当に良かったです。
もちろん遠方のお客様がツイートを見たとお買い求めいただけたことも、とても嬉しいです。


マスクの販売がジワジワ伸びていく中で、総ゴムボトムスの販売は下降の一途を辿っておりました。
前年対比売上4割減となっていた為、社内に冷たい空気が流れはじめていました。
普段は他作業を行っている担当者も、どんどんネット販売の作業にまわるようになりました。

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マスクの出荷をするに辺り箱がつぶれないように一つ一つプチプチで梱包する作業を皆に手伝ってもらいました。

何百という箱を一つ一つ丁寧に包装しながら、剥がしやすいように付箋で剥がし口を作ったり、いろんな案を出しあいました。次第に社員同士で笑顔がこぼれるようになり、静まり返った社内に暖かい空気が流れるようになったのを覚えています。

何度輸入を繰り返したのか覚えていません。
近所のナフコにプチプチを買いに走ったり、帰りが遅いとぼやいたり。
在庫が入荷すればTwitterで告知をする。

「ええ?ツイートするよ?電話なるよ?ええね?」
幾度やったか判らないやり取りです。

ツイートすることに、あの様なキラキラした感情を持ったことは過去にも先にもありません。花火をあげるような気分に近いかもしれません。煤で頬を汚しながらも、笑顔を想像しているような。

不思議な光の中にいました。そしてあっという間に4月は過ぎていきました。

メールやお手紙、ご注文の際に多くのお客様から頂いた言葉があります。


「ありがとう、助かりました」


コロナ時期以外にも頂くことは沢山ありましたし、いつも感謝しておりますが、今回に限ってはこの言葉が強く力を持っており、忘れる事が出来ません。

頂いたお手紙があまりに嬉しくて、ファイリングして社員一人一人に「読んで!!」と追いかけ回したりもしました。私個人宛に頂いたものは私の引出しに、それ以外は光で劣化しないよう黒いファイルに入れて今もなお保管しております。

4月を過ぎた頃「布マスクは作らないの?」というお声を頂くようになりました。
同業種他企業は多くが制作に乗り出しており、繊研新聞や、地元のニュースで取り上げられておりました。
中でも同じ町内にある企業が配布だけの為にマスクを作り、地元の小中学校へ寄付をしたというニュース。純粋に「かっこいい」と弊社でも話題になりました。

それの影響もあり、にわかに社内におこる「布マスク作ってみたい」という空気。
提携縫製会社からも「布マスクを作らないのか」という質問が増え、ついに布マスクを作る事を決定しました。

その話はいずれまたお話できたらと思います。

簡易マスクの販売が落ち着いた頃、購入いただいたお客様にお手紙をだしました。
買っていただけた事や、布マスク造りをすることへのチャレンジする切っ掛けを頂けた事への感謝の気持ちを込めて出しました。
全てのお客様にこのお手紙をお届けすることは出来ておりませんが、あの4月は駆け巡るような毎日で後にも先にもない月だと思っております。
お客様から頂いた「ありがとう」という言葉にとても励まされた月だったんです。


弊社の商品づくりの根幹にある「快適な毎日を届けたい」という気持ち。
ぶれる事なく、新たな気持ちで頑張っていけたらと思います。



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広島県福山市北部の小さな会社で地道にズボンを売っている会社です。記事はWeb販売管理部の新井・中田・粟根が書いております。 少しでも弊社の事をお近くに感じて頂けたら幸いです。