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受講レポート5:「アーティストインレジデンスを学ぶオンラインレクチャー」(2022/12/5)

全5回のアーティストインレジデンスのセミナーもこれで最後。
12月5日のセミナーのゲスト講師は、Do a front ディレクターの藏田章子さんでした。

◆Do a frontとは
『Do a front』は山口県で2012年から活動する任意団体で、「伝統文化」「地域資源」「現代美術」という異なるテーマを軸に、衰退する伝統芸能や、空き家などの地域文化資源を美術領域にて再活用する試みを企画しています。2012年から国内外のアーティストを招聘し、近隣のアートセンターや地域住民の支援を受けながら滞在制作や展覧会、交流事業等をおこなっています。

https://www.doafront.org

今回のセミナーのゲストの中で唯一、プライベートで活動している団体で、県などの補助金等を得つつ、様々な方法で地域とアートとの関係を模索し続けており、私が考えているアーティストインレジデンスの形に一番近いように思いました。
また、今回かなり率直にさまざまなお話をお聞きできたので、非常に得るものの多い回でした。

◆2012年から30人以上のアーティストを受け入れ
元々は藏田さんのご実家の建物を撮り壊しに関する話がきっかけとなり、伝統文化や古民家などの地域資源を守るという目的から、現代アートによって地域資源を活用することを考え始めたそうです。
藏田さんご自身はアートについてのバックグラウンドはなかったとのことですが、アーティストのご友人や山口情報芸術センター(YCAM)などの地域のアートの拠点を通じて知見を得てアーティストインレジデンスをはじめ、2012年から約10年で30人を受け入れてきたそうです。
まずはその行動力と、周囲を巻き込んで協力を得ながらプライベートのレジデンスを10年も続けて来られたということにひたすら敬意を覚えました。(藏田さんご自身は東京との2拠点生活とのことで、ますます驚きです。x)
また、レジデンスのテーマとして、地域密着・日本文化・食などを挙げていて、価値観の合うアーティストを招へいしているという点も長く続けられた秘訣ではないかと思いました。なお、公募はご苦労があったとのことで、現在は招聘事業をベースにされているとのことです。

◆自身が楽しみながら周囲を巻き込んでいく
お話を聞いていて、蔵田さんご自身が楽しんでやっていらっしゃるのが印象的でした。
藏田さんがアーティストに何を求めているかという質問を受けた時、アーティストさんから、自分では気づけない新しい視点が得られればそれでいい、リサーチや制作のプロセスを一緒に味わうことができることがレジデンスの醍醐味だとおっしゃっていて、あぁ私自身もまさにそういうスタンスでレジデンスがやりたいなと思いました。

また藏田さんのお話からは、地域のアーティストや職人さん、アート関係者や地域の様々な方々が藏田さんのお人柄や想いに共感してサポートをしてくださっている様子が伝わってきました。藏田さんご自身は自分の知識不足は地域の方々に補ってもらうとおっしゃっていましたが、そうした藏田さんの姿勢に皆さんが惹かれて手伝ってくれるのかなと思いました。
アーティストインレジデンスは1人ではできず、地域の方々や専門家の方々に様々な形で関わってもらうことでより良いレジデンス事業が出来上がると思うので、なんでも1人でやろうとせず、困ったら助けてと言うことも大事だなと思いました。

◆その他ピックアップ
そのほか、参考になったことや面白かったお話をピックアップします。
・自分がその人の作品を好きかどうか、はレジデンスで大事なポイント
・自分が持っている環境に合わせてマッチする作家さんを選ぶ。
・仲間集めは自然発生的。飲み会の席で興味がある人が参加してくれた。
・建物が活用されるのであればなんでもやっちゃえというスタンス
・初めの整備はなるべく手を入れないで最低限の掃除くらいにした
・レジデンス期間中は藏田さんも同じ敷地内に同居。地域の人たちが敷地に出入りすることも多いため、アーティストには地域密着のレジデンスであること、人と一緒であることが苦でないことを求めている。
・レジデンス事業やアートの価値に理解がある企業に協賛を依頼することもある(価値観を共有できる相手であることが大事!)
・アーティストに対して短い期間で成果を求めると結果的にリサーチ期間が足りなくなるので、考えることや発見することに力を入れてほしいと考えている。
・ボランティア(無償)は基本的に避けていて、お手伝いの学生さんたちにもアルバイト代を支払っている。
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この1ヶ月間、毎週アーティストインレジデンスについて考える貴重な機会をもらい、様々な事例を聞くことで、自分がやりたいレジデンス像というのが徐々に見えてきた気がします。

今回の学びを糧に、今度は自分自身がどんなレジデンスを常滑でやりたいと思っているのか、その姿を描いていきたいと思います。

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