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私なりの行政書士事務所開業について

行政書士、まずは兼業でいいんじゃないですか。

行政書士試験の合格発表があり、そして合格された方は、この資格をどうやって活かしていくかを考えるでしょう。

次の上位資格へのステップアップだという方や、資格マニアの方は、行政書士の登録をせず、さらに勉強を続けて行けばいいと思います。

私は、2017年の行政書士試験に2回目の受験で合格し、2020年に行政書士登録をしました。合格した時の年齢は52歳です。行政書士試験に合格する以前に、マンション管理士、宅地建物取引士、管理業務主任者などの資格を取得済でした。

私は、試験に合格したら行政書士事務所を開業したいとは思っていましたが、合格後すぐに開業という訳にはいきませんでした。合格した当時、私は、ある政令指定都市に勤務する消防士でした。消防士は地方自治体に勤務する地方公務員です。地方公務員は、地方公務員法により、副業が禁止されています。
公務員という立場のままでは、行政書士事務所を開業することができません。

それなら、「公務員を退職して、事務所を開業すればいいだろう」という方もいらっしゃると思いますが、何のコネもノウハウもない人間が、いきなり専業で事務所を開業しても仕事の依頼があるはずがない。遠からず廃業です。

公務員の定年は60歳で、段階的に65歳まで延長されたり、再雇用されるようです。副業が禁止されている公務員という立場である限り、行政書士事務所を開業することはできません。65歳まで待っていたのでは、人生の貴重な時間がもったいない。たしかに、65歳からは公的年金を受け取ることができますが、その年金だけで、豊かな老後は厳しいでしょう。少子高齢化のため将来的には、支給年齢が先送りになり、支給金額も減っていくでしょう。年金プラスアルファのお金が絶対に必要です。

消防士という仕事は、はたから見たらカッコよく見えるかもしれませんが、肉体労働であり、若者も年寄も火災現場で活動しなければならない内容は基本的に同じです。ですから、年齢を重ねてからの現場作業は当然きついものになってきます。日々の訓練もかかせません。
そこで私は、当面の計画として、消防士は55歳で早期退職することにし、違う職種に転職。しかる後、行政書士事務所を開業する計画をたてました。会社員としての給与をもらいながらの事務所経営であれば、なんとか生き延びることができると思ったのです。行政書士事務所の廃業率は、開業3年以内に9割は廃業すると言われています。とにかく事務所経営は、細々とでも廃業せずに続けることが肝心だと思ったのです。

消防士という職業は、勤務時間が24時間勤務で、1回勤務が終わると、翌日、翌々日と平日の休みがあります。ですから、隠れてバイトをやっている職員がいるかもしれませんが、バレた場合は懲戒処分を受けます。たまに新聞や雑誌にも、そのような記事が載ることがあります。まして、行政書士は、登録時に行政書士会に届け出なければなりませんし、登録した住所・氏名は公開されます。隠れて行政書士の副業をすることは、無理でしょう。また、そのような事をしてはいけません。

転職する職種については、行政書士の仕事をしながら、ダブルワークで働ける職種でなければなりません。また、年齢的に肉体労働は無理ですし、年をとっても無理なく働ける仕事。給料が公務員時代より減額するするのはあたりまえです。
行政書士の仕事は、役所へ申請する許認可や書類作成が主な業務になりますので、平日の日中にある程度時間のとれる職種がよい。消防士のような夜勤のある仕事なら、翌日の平日は休みになります。
警備員など色々と考えましたが、最終的に施設管理など「ビル管理」の仕事が良いと思いました。高年齢の方の求人があり、体力的にも無理がかからない。そして夜勤があり平日の休日もありました。

「ビル管理」の仕事について調べてみると、「ビルメン5点セット」という資格があることがわかります。
・乙種4類危険物取扱者
・第2種電気工事士
・二級ボイラー技士
・第三種冷凍機械責任者
・甲種・乙種消防設備士
の5種類の資格です。
転職するにあたり、私には「ビル管理」についての実務経験はありません。消防士でしたので、消防設備についての知識はありましたが、それだけでは再就職は厳しいと思い、資格で補おうと考えました。
消防士であるうちに、私は、上記5つの資格をすべて取得しました。試験は年に何回もあるわけではありません。試験日はたいてい日曜日で、試験日が重なってしまった日もありました。
ある日は、午前中に消防設備士の試験、午後から電気工事士の試験という日もありました。もちろん、資格の勉強も2つ、3つと並行して学習していました。

資格は取得できましたが、50代半ばの再就職には厳しいのものがありました。様々な会社に送ったエントリーシートは、何社に送ったかわかりません。
それでも、諦めず探し続け、縁あって今の設備管理の会社に勤めることができ、取得した資格は無駄にはなっていません。資格には助けられています。
そして、今、務める会社は平日の休みがあり、副業もOKなので、行政書士事務所を開業いたしました。

日本の税金・社会保障の制度では、私はまだ、月々の年金の掛け金を支払わなければならない年齢ですし、健康保険・介護保険も支払わなければなりません。
少ないながらも会社員としての給与をもらっていれば、給与で厚生年金、健康保険、介護保険などの社会保険料を支払い、会社が半分負担してくれます。また、少ない給与に課される所得税や住民税は、税率が低く、それほどの負担ではありません。
行政書士としての売上は、開業当初は少ないものでしたが、今は、そこそこの金額があります。行政書士だけで食べていくほどではないにしても、もう一つの仕事としては充分です。

行政書士は個人事業主ですので、もちろん確定申告は必要です。私は青色申告ですので、売上から行政書士会の会費、消耗品など必要経費や控除分65万円を引くことができるので、課税所得は、会社員よりお得です。
また、会社員としては、給与所得の基礎控除が48万円あり、社会保険料の支払いは、会社員としての給与で支払っているので、行政書士事務所の売上である事業所得では支払う必要はありません。

日本の今の税金・社会保険料のシステムでは、社会保険料の支払いが、べらぼうに高いです。ですから、会社員と個人事業主の二刀流は、たいへんお得です。

現在は、会社員として得る給与の手取り収入と行政書士として得る事業収入を合わせれば、公務員時代と同じくらいの手取り収入になっています。

働き方は、一通りではありません。無理に専業でやる必要もありません。
私にとって、会社員と行政書士は、どちらが本業で、どちらが副業ということはありません。どちらも本業です。

行政書士の副業の話題では、平日の日中には他の会社員としての仕事を行い、週末の土日を使い、役所への届出の必要のない相続や遺言などの業務を行う働き方を紹介している書籍を見かけたことがあります。
人それぞれ、いろいろな働き方があると思いますが、私自身の働き方としては、週末は家族サービスや友人との趣味、また、平日でも時間の空いた時には、自分の趣味を楽しみたいのです。平日も働き、土日にも行政書士の仕事をするのでは、私が思い描いた時間の使い方、働き方の方向性とは違います。

みなさん、無理のない範囲で、それぞれの仕事をしていけばいいのではないでしょうか。お金の入ってくるサイフは、たくさんあるに越したことはありません。
そして、それは将来に備えるリスク管理につながります。日本政府の年金制度はあてになりませんから。








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