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N抗体は不要なのか?

はじめに


 現在、子供の多くが自然感染でN抗体を獲得していると言われています。
 N抗体とは過去感染していた場合、検査で出てくる抗体です。
 抗体検査の陽性判定に使われますが、過去がいつなのかは分からないので、現在陽性かどうかは正確には分かりません。

 Nが指すものはヌクレオカプシド(RNAを直接覆っているタンパク質のこと)です。接種薬剤からは作られないものです。これに対して接種で作られるスパイク(カプシドのさらにさらに外側にあるタンパク質)をSと略します。接種をするとS抗体は作られますがN抗体は作られません。感染するとS抗体とN抗体の両方が作られます。そのため、N抗体の有無を調べれば、接種の有無に関わらず、過去感染したかどうかが分かるという事になっています。

 カプシドについては過去記事を参照下さい。図では球形になっていますが、実際には螺旋型が繋がってひも状になっています。螺旋型のパーツ(型をそのまま使うとRNAをひも状に格納しようとしても曲がらないので強固な殻を関節部分で接合している)を組み合わせてRNA鎖を覆っています。このNタンパク(スパイクと区別してこう呼ばれます)は血中で安定していますが、細胞内に侵入するとパーツ同士の接合が弱くなって、分解してしまい、中のRNAが解放されるという仕組みになっています。

 今回、記事を書く目的は「N抗体はない方がよい」という考えの医療関係者の方がいたからです。つまり感染はしない方がよい、接種をして感染を防いだ方がよい(S抗体はあってもいい)という事だと思います。

 ここで接種に関するバイアスを感じますが、理由は明らかにされていません。

 一方で私を含め、自然感染してN抗体を獲得した方が良いという考え方があります。

 どちらが正しいか、理由を突き合わせる事ができないのですが、

  1. N抗体がない事でNタンパクが免疫で駆除されないとどうなるか

  2. Nタンパクの毒性

 について解説したいと思います。この記事が正しい場合は、Nタンパクは体に害を及ぼすので、それを駆除するN抗体を獲得して、免疫の排除対象にした方が良いという事になりますが、何が正しいのかは読者が判断下さい。

変異と新型に追いつかない

 mRNA製剤は開発速度が速いので変異しても対応できるというのが、この核酸医薬の売り文句でしたが、実際には様々な理由で追いついていません。

 Sタンパクを標的にしている事で、Sタンパクを失った状態のウィルスに対する攻撃手段がない事が問題ですが、Nタンパク部分は変異している可能性はあるものの、感染型に関してはSタンパクに比べてほぼ変異がないと考えられています。

 こちらが正しい場合ですが、N抗体を獲得していれば、Sタンパクを失った状態のウィルスを、免疫に標的として認識させ駆除する事が可能になります。変異に依らず駆除できるのがメリットです。

エンベロープウィルスの定説にあてはまらない

 エンベロープウィルスには以下の定説がありました。

  • エンベロープを失うと感染力がなくなる

  • ヌクレオカプシドは分解する

  • 螺旋構造のカプシドはRNAを保持できない

 これらがあてはまらない状況になっていると考えられます。
 アルコール消毒の有効性はこれらの定説を根拠にしています。ところがアルコールが分解できるのはカプシド(Nタンパク)の外側の構造(エンベロープの内側の脂質二重膜まで)までなのです。
 逆にアルコールや界面活性剤を使用すると、Nタンパクの殻だけで保護されたウィルスを増やす事になるという点に注意下さい。
 Sタンパクを失ったウィルスは一時的に感染力が弱まります。しかし感染しない訳ではありません。ノロウィルスなどはエンベロープを持たずカプシド(Nタンパクの殻)だけしか持たないウィルスですが感染します。
 従来、エンベロープウィルスは消化器には存在しないと言われてきました。消化器では胃酸などでSタンパクと土台となるエンベロープ(脂肪性タンパク)が破壊されるからです。
 しかしながら胃腸感染の症例が多く報告されています。子供の感染でも特に初期の症状で嘔吐や下痢が発生しています。
 国立感染研究所も初期より便のPCR検査の必要性を提示しています。
 正20面体のカプシドで保護されたノロウィルスなどは胃腸に到達して感染するが、螺旋構造のカプシドを持つ事が多いエンベロープウィルスのカプシドはRNAを保護できないとする推察がこのような定説を生んだと思われますが、果たしてこれが正しかったのか疑ってかかる必要が生じています。
 ノロウィルスで発症する際には汚染食材中に一定濃度ウィルスが必要とされています。が、最初に上気道で感染するウィルスでは数が増加した状態で嚥下されて胃腸に入ってくる可能性があります。
 RNA鎖が非常に長いウィルスですが、こちらに沿って長い構造を保護する必要のあるウィルスという点を考えると、Nタンパクの殻にはそれなりの接合強度が必要となります。非常に微細なサイズの構造なのでアルコールや胃液が侵入できるかも問題です。分解ができなければ中のRNAが破壊される事は難しいかもしれません。
 Nタンパクを分解するにはカルシウム濃度を低下させなければなりませんが、胃液はカルシウム濃度が高いほどよく分泌され、食べ物からカルシウムイオンを分離する能力が強い消化液になりますので、胃の中のカルシウム濃度が高くNタンパクのカプシドの接合が強化されてしまう可能性があります。これでは逆にRNAを保護してしまいます。

 エンベロープを持たないウィルスはカプシドに突起を持っていてそれを使って消化器の細胞に感染するという説もありますが、そのような事をしなくとも腸壁の細胞は食作用といって細胞内に物質を取り込む力が体内の細胞の中で一番強く働いています。
 この状態でNたんぱく質のカプシドを取り込むと中のRNAが解放されて増殖を始め、スパイク付きのウィルスを体内に復活させてしまいます。

 以上の感染シナリオを考えた場合、S抗体は全く何もできない点に注意下さい。N抗体があれば消化器の血管などでNタンパクのカプシドを攻撃できるかもしれませんが、胃に入ってしまったウィルスには、それ以降、吸収された後増殖するまで何の予防効果も得られない事になりますし、そもそも変異していたら以降も何の役にも立ちません。ただの異物として体内に存在しているだけとなります。

感染という言葉は広い

 感染力の低下と書きましたので、意味をご説明します。感染とは体内でウィルスが増殖した状態の事を言います。必ずしも発症する訳ではありませんし、発症していても自覚できる訳ではありません。自覚のないまま病変が進行している場合もあります。

 本記事では感染力とは増殖する勢いと解釈しています。

 ウィルスがSタンパク(スパイク)を持っていれば増殖の勢いは強いと言えますが、スパイクがないからといって感染しない訳ではありません。勢いが低下するというだけです。
 
 Nタンパクの殻しかないウィルスも感染しますし、数が多ければそれなりの勢いで感染します。一度細胞内に侵入して分身を作れば後はスパイクが復活する訳ですから助走がややゆっくりといった程度で脅威がない訳ではありません

S抗体では排除できないNタンパクの毒性

 一般的にNタンパクは無害とされていますが、果たしてそうでしょうか?
 Sタンパクだけを攻撃すれば良いという発想で接種製剤は作られています。

 確かにSタンパクの毒性は副作用や後遺症も引き起こす程強いので、そちらに比べれば問題ないという事なのでしょうが、2つの誤りがあります。

 まず第一にNタンパク自体が細胞の老化を促進する毒性を持っています。これは何が原因かはっきり言及されてきませんでしたが、Nタンパクは細胞内で分解した後、細胞周期を早めてウィルスの増殖速度を上げる働きがあります。細胞をウィルス工場にするための機能増幅薬として作用するのですが、感染・接種によりテロメアが短くなる(細胞分裂限界が早まって細胞死に近づく)という報告があります。たどる経路は異なりますが、無理に増殖速度を上げているという点では細胞にかかる負担は同じです。大量のmRNAの代わりにNタンパクが増殖を助け、細胞死を早めているのです。

 第二に、この事は自然感染したウィルスが一気に増殖する理由にもなっています。その場合Nタンパクは単なる推進剤ですが、症状が急性で悪化する原因になっているとも言えます。一次的・直接的に害を及ぼさなくとも、二次的に被害を広げているのです。

 こうしてみるとNタンパクが失われる方が、感染速度も緩やかになって細胞への被害も小さく、感染・重症化共に予防効果が高くなると言えます。

N抗体は必要か?

 自然感染した人はN抗体を獲得すると思われています。事実感染者からN抗体が発見されています。

 つまり、感染するとスパイクを失ったNタンパク質の殻だけのウィルスが体内にかなりの量存在する事になるためにN抗体が作られるのです

 経口感染の場合のシナリオだけをご説明しましたが、この結果から見た場合、血中や体内のあらゆる場所で、物理的にスパイクが失われてNタンパク質の殻だけになっていると思われます

 また、ウィルスに侵入された直後の細胞が破裂した場合、分解されていないNタンパク質が大量に血中に放出されると思います。

 スパイク自身は構造強度が強いものではありませんので、細胞などに接触すると物理的に剥離してしまい、一定数は侵入できずに本体だけ取り残されるのではないかと推察します。

まとめ

  • N抗体を獲得するには自然感染が望ましい

  • N抗体がないと経口感染等の進行速度が早く、無防備になる

  • N抗体がないとS抗体の攻撃を免れたウィルスが体内に残る

  • N抗体がないと細胞外でRNAが分解できないため、ウィルスの本体が体内に残ってしまう

  • いわゆる「定説」はキリがないのでこの辺りで手を打とう、という希望的観測ありきのものである可能性が高い

以上です。
ありがとうございました。

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