抗生物質はウィルス症状に効かないのか
抗生物質はウィルスに効かないのか
ある医師の方が処方したとされる薬の内訳がネットに流れた事があります。患者はCOVID-19(新型コロナウィルス)に感染していました。ウィルス感染症です。
そのリストの中に抗生物質が含まれていた事で、ネット上で発信している医療関係者を含めた様々な人たちより「ウィルスには抗生物質は効かない」というセオリーを掲げた批判が噴出しました。
インフルエンザを例に取ると、現在ウィルス感染症に抗生物質を処方する事は通常ありません。(昔は処方していました)
ウィルスに抗生物質は効かないという言説が医療の標準化された認識となってしまったためですが、こちらを根拠に抗生物質の使用に関わる治療方法を叩く空気になりました。簡単に言えば一つの常識めいた知識をあてはめてそこから外れた判断なり意見を叩く事が定着した感があります。
抗生物質は細胞壁の生成を阻害する
COVID-19に関して言えば、抗生物質が有効なのは細胞壁の生成を阻害するからです。COVID-19がスパイクと呼ばれる突起を獲得する方法はエンドソームや細胞壁からです。スパイクはCOVID-19の毒性の本体、毒性そのものですので、抗生物質で細胞壁の生成を阻害すればCOVID-19はスパイクを獲得できず、毒性を持てない事になります。
さらにCOVID-19の驚異的な感染力はスパイクが細胞に接触する事で実現します。つまりウィルスが増殖できない(感染速度が激減する)事になります。
さらに感染細胞が分裂して増える事も防ぎます。(分裂の際にスパイクを獲得したウィルスを放出する事も防ぎます)
この状態では症状自体が出ないかもしれません。(深刻な症状は抑え込む方向に進むと思われます)
おそらく抗生物質がウィルスに効かないと主張する方はこれが分かっていません。感染場所によっては有意な効果が見込める、と言って良いかもしれません。
タンパク質の合成を阻害
ウィルスがどのように増えるか解説した記事です。
ウィルスの生成には酵素とタンパク質が必要です。一部の抗生物質はタンパク質の合成を阻害しますので、ウィルスが増殖できなくなります。
ウィルス性肺炎とは
インフルエンザの肺炎があります。あまり注目されて来なかったと思うのですが、インフルエンザもこじらせると肺炎に発展します。
この時、細菌性肺炎と異なる特徴的なCT像になりますので、見分けが付きます。
ところが、このCT像の見方はやや難解になってきます。別の症状が現れるからですが、よく見るとウィルス性肺炎の特徴は残っています。
どういう事かと言いますと、ウィルス性肺炎を発症した後は細菌性肺炎に移行しやすいのです。肺が全面真っ白、という状態は細菌性肺炎です。ウィルス性肺炎では逆に繊維化や粒状化で黒い部分が増えるからです。
ここで賢明な医師ならば、細菌性肺炎への移行を食い止めるため、抗生物質を投与・処方すると思います。
抗生物質がウィルスに効かない、という人は医療関係者であったとしても、ウィルス性肺炎が細菌性肺炎に移行しやすい、という症状の特徴を知らないのです。
ウィルス性肺炎自体を経験してない医師や、症状の特徴を理解するほど症例を診ていない医師が多いのでこうなります。
わざわざこんな事を書くのは医師の肩書きを持ちだして、抗生物質の投与に意味はないなどと発信する人が多いからです。
肩書きは関係ありません。個人的には経験豊富で判断力が高いのは抗生物質を処方する医師の方ではないかと思います。
後書き
なお、こういった機序が理解されていたかは分かりませんが、以前はインフルエンザでも抗生物質がよく処方されていましたので症状が長引く事はあまりなかったのではないかと思います。当然肺炎まで発症する人も今よりさらに少なかったかもしれません。
以上です。ありがとうございました。
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