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オンライン診療より通院

遠隔医療・オンライン診療

 オンライン受診が話題になっています。筆者もCOVID-19による診察が難しくなった際には、他の施策に比べ普及の遅れを指摘した事があります。ですがこれはあくまで非常時の措置で、返ってデメリットの方が目立ってくるようになりました。

 遠隔医療はアメリカでは何十年も前から行われています。メリットがあったからなのですが、日本と事情が異なります。日本ではまず汎用的な家庭用端末がありません(あえて言えばパソコンですが、各家庭に必ず必要なものでもありませんし、設置義務もありません)。現在の政策でオンライン、デジタルなどと簡単に言いますが、インフラの問題は無視されています。インフラがなければ何もできませんし、性能が低ければ満足行く結果も運用もできません。発想時点でしろうとなのです。

 当然、この延長で出てくるオンライン医療(と呼ばれる事が多いようなので*1)も使い物にならない、もしくは根本的な問題がある訳です。

 感染症患者に来院の手間を省いて診察、という方法は一見有効に見えますが、そうではありません。むしろ現状、医療側の対応が難しい状況を医療環境的に作られてしまっている、ですとか感染の勢いがありすぎて対応できない事で善後策、もしくは止むにやまれずひっぱり出されてきた色合いが濃いものになっています。今までほとんど活用されていなかったのに…突然自分たちの都合で使えるようにという事なので、完成度の高い手段ではありません。

オンライン受診の一番の問題

 問題が多々ありすぎますので、一番の問題だけ採り上げたいと思います。それは診察が不適切になる事です。

 特に未知の感染症のような症状の場合、症状を細かく把握する事が必要になります。相手はウィルスという極小サイズの病原ですので些細な兆候しか現れない事もあります。全身のどの組織が影響を受けているのか、患者本人と話すだけでは分かりません。本人が症状として認知できていない場合もあります。

 このような時、通院診療であれば、各種検査を行う事ができます。それによって体内の状況を知る事ができるのです。検査をしてみなければ分からない、もしくは判定できない事は多いです。

 オンライン診療は症状が安定している際の事後観察には役に立つと思いますが、初診からいきなりオンラインは何の手がかりもない状態で一般論的な診断しかできませんので、ホームドクターや家庭の医学に近いものになってしまう場合があります。

 当然、命に関わる感染症で、このような診療が危険な事はお分かりかと思います。目隠しをした状態で道を歩くようなものだからです。

 問題なのは、現場が止むにやまれず行っている事を、行政側が便利な手段が増えた的な受け止めをしている事で、手続きや書類の規制などはあるものの、診断にかかる検査の重要性を見落としているからです。(指針に従い対面で診察せよ、などというふわっとした書き方をされています)

 ですので、通院の代替手段としてオンライン診療を手段として提供せざるを得ない場合は、バイタルの測定や検査を行う施設が別途必要です。この発想が現在完全に抜け落ちています。

 後遺症など、もしオンライン診療で改善しない場合は、通院ができないか検討して下さい。

 同様の理由でPCR検査を行わない事は、何の手がかりもなしに対策を考える事になりますから、うまく行かない・変化の理由が分からないという事に必然的になります。よく効く(希望的観測)薬があれば、状況を見なくとも検査軽視で乗り切れるということでしょう。


*1
対応している病院ではオンライン受診と呼ぶ所もあるようです。

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