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妄想はきっと、ワクチン副反応を凌駕する②

2回目のワクチン接種を受けてきました。

ええ、怖かったんです、とても。

だって世間の皆様が、2回目の方がしんどいって。


病院の先生も言っていた。
「2回目の反応の方が強く出る人多いんで、ゆったり無理せず過ごして下さいね」



だけど、打つこと自体に恐怖はなくなっていた。
2秒、「チクッとしますよー」と言ってもらっているうちに終わるのだ。
そして、その後の対処の仕方は知っている。

そうさ。
私には、乗り越える力がある。

今回も、気付いたら、妄想していた。
もはや、妄想を取り上げられたら、私には生きていく力が無くなるに違いない。


翌日、朝は腕が痛い程度だった。
昼になると身体が重くなってきた。

そういえば、ここ数年、全く風邪もひかなくなった己の身体に確認する。
「これが倦怠感というやつか…?」

いや、気持ちの問題かもしれない。ワクチンを打ったと思っているからダルいのだ。
試しに、フラを踊ってみた。
今、課題の曲は、割とテンポが速い。
踊り始めて数分、体から声がした。

ハイ、一回集合ー!!
ここにね、ダルいのに踊ってるやつがいまーす!
安静に過ごせと言いましたよねー?誰だ先生の言うこと聞いてなかったのはー!

…ダメだったみたいです。
どうやら、この倦怠感は本物だ。

次に来たのは、ものすごい空腹感だった。
バナナを口に放り込みながらネットで検索する。

「免疫細胞がいっせいに働き出すため、エネルギーを大量に消耗している」説が浮上。

おお!!
私の身体の中で「働く細胞」さんたちが、一斉にトレーニングを開始している。
これは、確実に、私が強くなっている証拠ではないか。


そうだ、これは…!

『TOKYO MER 2』(希望)に向けて、鈴木亮平がパンプアップしているのだ!
コロナウィルスという、未知のウィルスが侵入したした場合でも、私の身体のMERは、きっとワンチームとなって戦い抜いてくれるはずだ。

鈴木亮平さんに、良質なタンパク質を!!


よし、今日の夕食は、鶏胸肉だ!

「鶏胸肉って、鶏ハムにしようと思ってたやつですか?あ、じゃあ今日、鶏ハム?」


バカヤロウ!!

鶏ハムになんかしたらなぁ…
サラダに添えただけで、鶏ハムもサラダのカテゴリーにされちまうんだよ!!
「今日のメインはなぁに?」って、鶏ハムを目の前に「まさか、これがメインじゃ無いよね?」って顔をされる身になってみろ!

しかも今、倦怠感が凄い上に、全身が筋肉痛になってきている。
鈴木亮平がパンプアップに励み過ぎている…!
亮平さん、素人にはそのトレーニングはキツすぎます!と言っているのに、彼は嬉々として天上にぶら下がって懸垂している状態だ、私の体内で。

すでに、私は、昨日歩行し始めたクララみたいになっているというのに、もう一品、メインを作れと言うのか…?

「し、失礼しました!えっとじゃあ、ガッツリメインで、胸肉の唐揚げ?とかどうでしょう」


バカヤロウ!!

唐揚げはなぁ…
「大丈夫、適当でいいんだからー!」と料理全般ポーイポーイアハハ!とやってのけるあの平野レミさんでさえ、「目を離したら危ないからね」と言わしめる料理だぞ。

それを、二足歩行もままならないクララに、2度揚げまでやらせるつもりか?
ロッテンマイヤーさんに、フルネームで叱られるぞ!


「オ、オーブン!オーブンに入れましょう!」


バカヤロウ!!
…すごく良いじゃないか!!


開いた鶏胸肉に、レモン塩を擦り付け、30分ほど放置して、皮を上に、180℃のオーブンで40分。

レモン塩は、輪切りのレモンを塩で漬け込んだだけのもの。国産レモンが安い広島に来て教えてもらったんだけど、これが美味しい。

鳥の骨つき肉でやると、大変なテンションなること間違いなしの一品、胸肉でやってもええじゃ無いか!
しかも、調理中、私の立っていなきゃいけない時間が圧倒的に少ない。
パサついたら悲しいので、オリーブオイルをひとまわしかける。


歩き始めたばかりのクララは、体内の鈴木亮平さんのために、夕飯作りを頑張った。

普段から、すごく料理に励んでる風になっているけれど、そんなことはない。
妄想が私を突き動かしただけだった。
これが本当の風邪だったら、とっくに「今日は晩御飯作れません」と夫に連絡を入れている。

とにかく、胸肉が食べたい。
しかも、大量に。
そして、鈴木亮平さんのために。
もはや、ワクチン接種がどうこうではない。
鈴木亮平さんが私を突き動かしている。


サラダとスープをどうにか添えたら「ん?今日は誰かの誕生日だっけ?」みたいになった。

もう、これは、私の体内の鈴木亮平さんの誕生日だ…!ワクチンって亮平だったのね!

鈴木亮平さんに脳内が完全に支配されたころ、熱を測ったら38℃あった。


ワクチン2回目の反応が強く出る人は多い。

どうやらそれは本当だった。

夫と娘は嬉々として食べていた。
ごめん、それは亮平に作ったんだ、というほんのりとした罪悪感。ハピバスデー亮平。


妄想が私を突き動かす。

さらに翌朝。
熱も完全に下がった私の体内では、鈴木亮平さんが優しく微笑んでいた。

「いつでも、命を守る準備は出来てます」





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