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屑籠(くずかご)から生まれた名作



靴下のお話

靴下工場の編み立て現場は宝箱。アイデアのヒントがたくさん転がっている。技術の進化は「失敗作」から生まれることが多くあります。

答えは現地にしかない


タビオでは、美しいデザインソックス名品の呼び名に相応しい「フロート編み」の靴下があります。それがこちらです。


これらの画像からもご覧いただけるように絵画のような美しさです。タペストリーにあるような。ゴブラン織に近い技巧を感じます。それを編み物・・・で表現できているのが驚きなのです。

驚き


複雑なデザインを靴下で表現すると内側に糸がたくさん渡ってしまいます。この「フロート編み」の靴下はそれがありません。イコール、足指に糸が絡みつくことが無いので、履き心地を損なうことがありません。さらに編み物なので伸縮性・・・が担保されます。それにら加えてタビオクオリティ。程よいストレッチ感で絶妙なフィット感が得られます。

そんな良いことづくめのこの靴下
出身は、靴下工場のゴミ箱なのです。

え?

驚きです。



なぜ捨てられていたか

シーズン前にコレクションのサンプルオーダーが、大勢のデザイナーから編み立て現場へ指示書として編機の横に貼られます。それを見て職人技術者は糸を立て機械を動かしていきます。編機の調子づけも兼ねて、靴下のかたちにする前に筒の状態で試し編みをします。そこでエラーになった編み生地は、即座に捨てられてしまいます。作業としては必ず発生する行程です。

あるミスがきっかけ

デザイナーからの指示で試編みを進めていると、表の糸と裏の糸を逆に編んでしまいます。当然捨てられて編み直し。すぐに修正されました。

しばらくして、工場内でサンプルチェックをしていると屑籠ゴミ箱に面白い編み生地を発見するのです。今まで見たことのない、表面が膨らんだ編み地。

それが、この表と裏の糸をかけ間違えて捨てられた失敗作でした。

その偶然の失敗を靴下にしてみると、、
表面が膨らんで立体的で、複雑な表情の凝ったデザインソックスに仕上がるのです。それがこのフロート編みの靴下です。


私が商品企画を担当していた当時から10年を経て。編み立て技法としてスタンダードとなり現在では、素材(ウール)のバリエーション。さらには多色のデザインが可能となり深みが増して多彩となります。

それを練度の高いデザイナーがこなすことで、唯一無二の領域まで到達します。銀座シックス店などに代表されるTabioブランドの顔として不動の靴下定番として定着するまでに至りました。



探究心が失敗作を名品に


そんな靴下のお話でした。




久方ぶりの靴下話
お読みくださって
ありがとうございます♪


ゆうなって




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