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頑固者のお気に入り



「おまえのとこの靴下いいな」


ある日の父との会話。二十五年も前で薄れつつある記憶。癖のある声で、癖のある髪質で。誕生日やら父の日やら。気を利かせてプレゼントしても身につけることもなく。いつも、それでも丁寧に箪笥にしまわれてしまう。何気なくあげた靴下。見えないなら、派手なの履いとけ。と赤い靴下をテーブルに置いておく。すると、以来毎日それしか履かなくなった。気に入ったらしい。ちと誇らしかった。うちタビオの靴下いいんだなって。


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