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#2 演劇思い出ばなし1/岸田國士「劇の好きな子供たちへ」より

今回ご紹介するのは、青空文庫より、
岸田國士さんが書かれた
「劇の好きな子どもたちへ」という短文の第一節です。
出典のリンクはこちらです。ぜひご一読ください(^ ^)
https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44814_40790.html

1950年に「少年少女」という雑誌に掲載されたそうです。
作者の岸田國士さんは、演劇界、特に「新劇」と呼ばれる分野では重鎮の方で、
新劇劇団の東大、と呼ばれる文学座の創始者であり、ムーミンの声などでお馴染みの女優の岸田今日子さんのさんのお父様でもあります。
また、岸田戯曲賞という、岸田氏の名を冠した賞は、今も新人劇作家の登竜門として運営されています。
実は、この、青空文庫に掲載されている演劇関連の書物のほとんどは岸田さんが書かれたものです。
エッセイ、戯曲、翻訳と、ジャンルは実にさまざま。
演出家でもあるので演技論も多く、腹を据えて読みたい作品満載なのです。

この「劇の好きな子どもたちへ」は、読み始め冒頭の2段目で、
「へぇええええええええ!!」ガツーン!!!
とやられてしまいました。

その部分を抜き出します。

ーー楽しい遊びであるからには、思う存分、自分が面白いと思うように、そして、人も面白がるようにやるのがいい。自分だけが面白く、人にはそれほど面白くないというようなやり方、あるいは、人を面白がらせようとばかりあせって、自分はそのためにかたくなったり、したくないことをしたりするのは、たいへんまちがったやりかたである。ーーーー

表現をする上で、
「??自分が楽しむためにやるのか・・・・」
はたまた、
「??見ている人を楽しませるためにやるのか・・・」
ということは、永遠の課題だ!!と、思っていました。
わたしは上京してすぐ、翻訳劇を中心に上演する劇団の俳優教室に入りました。
その教室の演技の先生が、アメリカ人の女性だったんですが、彼女は、いつも、
「アイテノタメ!!(相手のため)」
「オキャクサンノタメ!!(お客さんのため)」
「each other LOVE!!(愛しあいなさい!!)」
と、おっしゃっていました。
なので、自分が楽しむことより、相手役やお客さんの楽しみを優先させなければ!と、思いつつ・・・、
いやいやいや、自分が楽しめなければ、お客さんも楽しめない。
だからまず、自分が楽しむことが大事、と、
有吉佐和子さんの「出雲の阿国」に書いてあったではないか!!
ん〜〜、あの劇団の教室はプロ養成のものだから、
お客さん優先なのかなぁ〜〜〜?????
じゃあ、趣味としてなら、自分の楽しみ優先でいいんでないの??
と、開き直りつつも・・・、
そこはかとな〜〜〜い、罪悪感・・・・が・・・・。
自分か?! 
お客さまか?!
どっちなんだ????!!!
と、悩み続けてウン10年。
ウンじゅうねん!!これは誇張ではありません!!
・・・・・・なのに・・・・、え?
ここに、
「両方ですよ。」
って、あっさり書いてあるじゃない。ええ???!!!
もう・・・、もっと早く言ってよ〜〜〜。
この文は子ども向けに書かれたものなので、
当然、プロを目指す人の心構えじゃない、かも知れませんが、
職業としてやる方に、限らず、と、本文の中にも書かれております。
演劇は英語で playと言います。遊びなのです。
プロがやるものでも、アマチュアが趣味でやるものでも、人間対人間、ということでは変わらないと思うんですよね〜〜。

もうひとつの ガツーン!!! は、
第一節の中盤、

ーーー劇を舞台にかける前から、なるべく、いろいろなめんどうな仕事を、みんなで分担をきめて手つだうようにしなければならない。ーーー

からのくだりです。

劇団ではだいたい、出演者も裏方の仕事を分担します。
私は、縫い物、靴磨き、照明、音響、塗装、会計、ツアーコンダクターなどなど、本当に様々な仕事を担当しました。
その中には、縫い物にように苦手〜〜な分野もありまして、なんだかんだと作業から逃げたり、小道具作りにお金をかけすぎて「バッカじゃないの??」と先輩を呆れさせたこともありました。
こんな私を、導いたり、見守ってくれたりした先輩、同期、後輩には、ほんとうに・・・本当に!!
感謝の気持ちしかありません・・・・。
そして、そんな共同作業を続けていくうちに、知らず知らずに協調性というものが身についていたようで・・・。
わたしは、けっこうワガママな方なんですが、いま、どうにかこうにか社会人としてやっていけてるのは、お芝居を続けていたおかげだと思っています。

では、最後に、芝居をやって良かったなあ〜〜と思わせてくれた一文を読ませていただきます。
これは演劇だけでなく、すべての表現に通じる言葉だと思います。

ーーー劇というものは、がんらい、見せる方と、見る方とたがいに力をあわせ、気もちをそろえて、そこにできあがる美しい全体の空気を楽しむものなのである。ーーー

この記事と、同じ内容を音声で 
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ぜひお聞きください( ´∀`)


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