見出し画像

【短編小説】Revived(1012文字)




ボールを持った私は強力な衝撃を受けて吹き飛ばされた。

私の体はグラウンドに叩きつけられた。

倒れこんだ私は、遠ざかっていくボールを睨みつけることしかできなかった。



私は兄の影響でラグビーに興味を持ち始めた。
陸上選手として中学時代を過ごした私は、兄の大学ラグビーの試合を観戦した。
その迫力とチームワークに魅了され、自分もその一員になりたいと強く思うようになった。 

高校に入学した私は、ラグビー部に入部することを決意した。
周囲の男子たちと一緒に泥まみれになりながら、ラグビーの練習に励む日々が始まった。

現実は甘くなかった。
男子との力差や体力差は想像以上だった。
私は毎日の練習で何度も挫けそうになった。
タックルを受けるたびに地面に叩きつけられた。
体中が痛みに悲鳴を上げた。
それでも、負けたくないという気持ちだけで踏ん張っていた。


ある日の帰り道、私はとうとう限界を感じた。
その日は強烈なタックルを何度も受けて倒れ、心が折れかけていた。
疲労と悔しさで涙が溢れていた。
家に帰ると兄に打ち明けた。


「もう無理。辞めたいよ、お兄ちゃん…」

その言葉に兄は少し驚いた顔をした。
しかし、すぐに優しい笑顔で答えた。

「君は君らしくやればいいんだ。無理に男子と同じようにやる必要はない。君にしかできないことがきっとある。」


その言葉に私は心から勇気づけられた。
翌日からの練習で、自分にしかできないプレーを探し始めた。

男子たちの力に対抗するために、スピードを活かしたプレーをすることを思いついた。
今こそ陸上部で培ったスピードとスタミナを生かすときだと思った。
私は男子に比べれば小柄だが、その分素早く動ける。


日が経つにつれて、私は徐々に自信を取り戻していった。
最初は女子は邪魔などと言っていた仲間たちも、私の変化と工夫に気づき、応援してくれるようになった。

私はもう一度、ラグビーを楽しむ心を取り戻した。
毎日泥だらけになりながらも、笑顔でグラウンドに立ち続けた。

ある日の練習試合で途中出場した私は、味方からのパスを素早くキャッチし、無我夢中でダッシュした。


気づけばタッチダウンを決めていて、私は流れる汗も汚れたユニフォームも気にせず拳を振り上げていた。


私は仲間から大喝采を受けた。
ようやくチームメイトのひとりとして認めてもらえた気がした。
私のそれまでの人生でいちばんの喜びを味わった日だった。

兄の言葉を胸に、私はこれからも自分らしくラグビーと向き合い続けることだろう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?