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栃木県における緊急事態宣言期間の振り返り(1)

はじめに

21/8/20から9/30まで、栃木県としては3回目となる新型コロナウイルスの「緊急事態宣言」が発出された。「緊急事態宣言」こそ8/20からだったが、それ以前の8/8からは「まん延防止等重点措置」が、さらにその9日前となる7/30からは「県版まん延防止等重点措置」が発出されていた。
この期間の栃木県における新型コロナウイルス発生状況の推移について、5回に渡って振り返ってみようと思う。

第1回…自治体別の状況(この記事)
・第2回…新規陽性者数、L452R株(デルタ株)への置き換わり
・第3回…療養者の内訳および病床使用率、死亡者数
・第4回…クラスターの内訳
・第5回…ワクチン接種率

なお以下の記事において使用している各数値はすべて栃木県のウェブサイトにおいて公表された数値を引用している。そのため厚生労働省や内閣官房等の政府が公表している数値とは異なる場合がある。またあくまで公表された数値を用いるため、その後計算上修正された数値があってもその数値そのものが公表されていない場合は使用しない(陽性率や直近1週間における新規感染者数等)
新規陽性者、退院者数については発表日ベースの数値を使用することとする。判明日ベースでは期間内となる数値や逆に期間外となる数値も含まれるが、2つの基準値の数値を使用すると混乱を招きやすいため発表日ベースの数値で統一する。また記事内で使用している各数値の引用元については、表示している画像内と、このページの最下部に記載。

そして、あくまで一個人の素人が行った振り返りであり、医療関係者や行政関係者といった専門家が行ったものではないということも予めご了承願たい。

予兆

この夏、栃木県において感染の急拡大が顕著に顕れ出したのは、東京オリンピックが始まってすぐの7/27だった(発表された陽性者数:108例)
ただ個人的にはその前の週から嫌なものを感じていた。その週はオリンピック開幕に伴う連休だった。他県と同様に栃木県でも、休日は平日と比べ発表される陽性者の数が少なくなる傾向にある。しかしその週は、連休中にも関わらず栃木県における発表数としては多い40台が続いていた。その週以前の傾向なら連休中の発表数は10台まで下がる。しかし実際には下がるどころか増えていた。平日だった前週と比べ休日であるその週の方が陽性者が多く発表されていたのだ。そしてその連休の終わりには日曜日の数字としては半年ぶりとなる高い数字が発表されていた。

またその週の月曜、7/19に発表されたスクリーニング検査では、L452R株の陽性率が急に上昇したという結果が示されていた。それまでは0〜4%だった陽性率がこの週になっていきなり13.2%になっていたのだ。

これらのことから、開会式の惨憺たる出来に失望しつつも、不穏なものを感じていた。そしてそれは翌週現実となり、8月を迎えた。

検証期間

この記事において検証する期間は次の通りとする。

・7/30〜8/7…県版まん延防止等重点措置(9日間)
・8/8〜8/19…まん延防止等重点措置(12日間)
・8/20〜8/30…緊急事態宣言措置(42日間)
・合計…63日間

なお63日間における新規陽性者数、退院者数、死亡者数、および発生したクラスター件数は以下の通り。

栃木県における重点措置・緊急事態期間の各人数・件数

63日間における新規陽性者数、退院者数は、9/30までの累積の約50%、死亡者数、クラスター件数は約30%を占めており、いかに栃木県における第5波がそれ以前とは比較にならない規模の大きさだったかがわかる(ただし退院者数は63日間の期間中に発表された人数であり、7/30以前の陽性判明者を含む)

また63日間を含むこの期間の10週分の新規陽性判明数カレンダーは以下の通りとなる。

陽性判明数カレンダー(7〜8月)

陽性判明数カレンダー(8〜9月)

県版まん延防止等重点措置が発出される7/30直前の7/27に100例を超え、以降前週同曜日の件数を上回る日々が続いた。また緊急事態宣言が発出される直前の8/19には栃木県としては過去最多となる273例が発表され、200例超えも珍しくはない状況になった。ここをピークとし、8月下旬以降は前週同曜日の件数を下回る日々が続く減少傾向に入る。特に9月は9/6を除いた全ての日で前週同曜日を下回り、9/30の宣言解除を迎えた。

人口10万人あたりの自治体別新規感染者数地図

63日間を含む10週の毎週金曜日時点での「直近1週間における人口10万人あたりの自治体別新規感染者数地図」の推移は以下の通り(発表日ベース。また最終日は10/1と期間外ではあるがこの週だけ曜日を変えると統一が取れなくなるので)

自治体別人口10万人あたりの新規感染者数の推移

それぞれの区分は以下。

■(紫)…週25.0人以上(ステージ4相当)
■(赤)…週15.0人以上(ステージ3相当)
■(橙)…週5.0人以上(ステージ2.5相当)
■(黄)…週2.5人以上(ステージ2相当)
■(白)…週2.5人未満(ステージ1相当)

新規数がピークを迎えていた8/20〜8/27のあたりでは、県内25市町のほとんどがステージ4相当になるほど極めて深刻な状況であった。人口10万人あたりの数は、人口が10万人に満たない小さな市町では実際の状況よりも上振れして数値が高く出やすい。しかしそのことを考慮しても、ステージ4の基準値である25.0人の倍以上の数値となっていた市町も少なくない数で存在していた。

直近1週間における自治体別新規陽性者実数地図

次に毎週金曜日時点での「直近1週間における自治体別新規陽性者実数地図」の推移は以下の通り(発表日ベース)

自治体別件数の推移

この地図の色分けの区分は政府や県が設定したものではなく、私が独自に設定したものになる。それぞれの区分は以下。

■(黒)…週130例以上
■(紫)…週80例以上
■(赤紫)…週50例以上
■(赤)…週30例以上
■(橙)…週15例以上
■(黄)…週1例以上
■(白)…週0例

週15例以上は県版まん延防止等重点措置の適用基準に準拠している。また週80例以上、週130例以上は宇都宮市の人口(約52万人)を基準に、それぞれステージ3、ステージ4以上になる数として設定した。そのため宇都宮市以外の市町でこの数値を超えることは全く想定していなかった(県内第2位の人口規模である小山市でさえ約17万人と宇都宮市の3分の1程度のため)しかしこの間、小山市、栃木市、佐野市、足利市の4市において週80例はおろか週130例さえも超えてしまう日があり、特に県南・安足において想定を大幅に超える新規陽性者数が発表される状況であった。

日別の自治体別新規陽性者数地図

次に毎週金曜日に発表された「日別の自治体別新規陽性者数地図」の推移は以下の通り。

日別の自治体別件数の推移(毎週金曜日)

緑に塗られた市町はその日に新規陽性者が1人以上発表された市町になる。7月下旬から9月初旬にかけて、県内のほとんどの市町で陽性者が発表されていた。流石に全25市町全てで発表された日こそなかったものの、最も多い日では23市町で発表された。件数こそ各市町の人口規模によって大きな差はあるが、県内の特定のエリアでのみ感染が広がっていたわけでなく、ほぼ県内全域において感染の広がりが見られた。緊急事態宣言発出前のまん延防止等重点措置では、当初、那珂川町、茂木町を除く23市町が措置区域となった(後日茂木町も追加され、那珂川町も同等の措置区域となった)他県のように特定の市町村にだけ適用ではなく、県内ほぼ全域で適用された理由は、この地図からも窺える。

なおこの期間の陽性者7,206人の自治体別の総数は以下の通りとなる。

自治体別件数の総数

次回の記事では、63日間における「新規陽性者(7,206人)の地域別、年代別、感染経路別と、L452R株(デルタ株)への置き換わり」について検証する。

※この記事内における各数値の引用元
栃木県ウェブサイト
・「栃木県における新型コロナウイルス感染症の発生状況および検査状況について」
https://www.pref.tochigi.lg.jp/e04/welfare/hoken-eisei/kansen/hp/coronakensahasseijyoukyou.html
・「新型コロナウイルス感染症(変異株)の検査状況及び発生状況について」
https://www.pref.tochigi.lg.jp/e04/welfare/hoken-eisei/kansen/hp/henikabu.html
・「人口・面積」
https://www.pref.tochigi.lg.jp/c05/kensei/aramashi/sugata/jinkou-menseki.html

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