飛田新地に体験入店に行った私の話③

●お店に到着

「すみません遅くなっちゃって！」
店先に座るおばちゃん（通称やり手ババァ）に声をかけました。

飛田新地は、よく似た長屋が並んでいるので迷いやすく、しかも盗撮禁止で携帯が使いづらいため、私は初日から遅刻してしまったのです。（地図は紙に印刷して持って行ったほうが良いです…。）

しかし「あー、新しい子やな」と全く気にする様子もありません。おおらかです。

玄関から上がろうとすると「ちゃうちゃうこっちや」と、すぐ横のドアから中に入るよう言われました。

店に入ると、普通の家みたいにこたつがあって、こたつの上にはティッシュとみかんがあって、カラーボックスにドライヤーやお菓子や私物がごちゃごちゃ入っていて、本当にふつうの家みたいでした。

なにも持っていないと言うと、その場でおばちゃんが近所のトキワ薬局に電話をして、コンドーム、リステリン、除菌ウェットティッシュ、おしり拭き、ローションを注文してくれました。
えっ、そんなに買うの？それいくら？借金になっちゃうの？と、お金も持っていない私はビビっていました。

次に、大量の衣装の中から好きなものを選ぶよう言われます。女の子が自分で買ったけどイマイチだったものや、辞めた女の子の置き土産とのことでしたが、可愛い衣装がたくさんあって、ハロウィンみたいな気持ちになってテンションが上がりました。

しかし、ここで問題が。

衣装が…すべて巨乳仕様…！

胸にハートの穴があったり、水着だったり。貧乳にはとても着られません。この街で貧乳はもしかして私だけ…？

これならごまかせるだろうとセーラー服をチョイスすると
「あ、それはあかんで。セーラー服は禁止や」
じゃあなんであんねんと思いましたが、どうやら最近未成年に見える服は禁止になったとのことでした。貧乳ピンチ。

迷っていると玄関に座っていた女の子が来てくれて「あー…お胸ないひと？」と聞かれます。なんだか上品な言い回しだなぁと思いながらはいお胸ない人ですと答えます。

「巫女とかは？似合うと思うけどなー。メイドも似合いそうやけどこれサイズ大きいんよー」
わざわざ時間を割いて選んでくれます。この親切な先輩はナナちゃんという名前でした。

結局チャイナ服に決まり、テロテロした衣装に身を包むと文化祭のような気持ちになりました。

浮かれていると裏口からマスターが入ってきます。
「ごめんごめん、遅なった」
そもそもマスターが今日来るということを知りませんでしたので、ごめんはおばちゃんに言ったものと思われます。

挨拶もそこそこに、マスターにこっそり聞きました。

「おばちゃんって、おばちゃんって呼ぶんですか？おばちゃん…さん？それとも山田さんとかって苗字で呼ぶんですか？」

私は初対面の高齢女性をおばちゃんとタメ口で呼ぶことに抵抗がありました。

「はぁ？おばちゃんはおばちゃんやろ笑」

おばちゃんはおばちゃんでした。

そんなことより源氏名を決めようということになりました。

以下のような決め方があるようです。
・その店に前にいた売れっ子の名前をもらう（ネットの評判を引き継げる/縁起がいい）
・マスターに似合うのをつけてもらう
・本名を残す（例:明子→メイ）
・覚えてもらえるよう奇抜な名前にする（例:生ハムちゃん）
・すでに店にいる女の子と似た名前は避ける（例:ナナとナミはNG）

これは事前に考えて行った方がいいです。
私は考えてなかったのであわあわしてしまいました。

ナナちゃん「アヤカはー？ww」
マスター「うっせ殴んぞwww」
どうやらマスターの元カノの名前のようです。

結局、さくらこになったところで、チリンチリン。先ほど注文したコンドーム他もろもろが自転車で届きました。

マイネームペンを渡され、源氏名を大きく書くよう言われます。

えっ、まだ入店するか分からないよ！？
書いちゃったら私が入店しなかったら全部無駄になっちゃうけどいいのかな…。

ペンを持って固まっていると、おばちゃんが
「あー！！」
っと叫びました。

「コンドームのL忘れた。ナナちゃーん！コンドームのL持ってるかぁー！？」
「あるよー」
「ほなちょっとくれへんかぁ？おばちゃん注文すんの忘れてたー。デカチンきたら困るわー」
「いいよー」
「これなんぼや？500円くらいか？」
「そんなんええよ笑」
快くコンドームを分けてくれた女の子ナナちゃんに私はぺこりと会釈しました。目があったナナちゃんはニコッと会釈を返してくれました。

やっていけそうな気がして、私はマジックで決まったばかりの名前をどんどん書いていきました。

④へ続く


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