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変わらない、変われない

夢の中で大笑いしたまま、ワハハと言って目が覚めた。しかも一晩で2回も……。

夢の中で、私は小中の同級生と集まっておしゃべりをしていた。でも彼らは卒業式以来会うこともなかった、さして親しくもない知り合いばかり。

それでも学生時代の楽しい瞬間を切り取ったような時間だった。みんなが本気で腹を抱えて笑ってる感じ。

なんだ、この安心感。言いたいこと言い合って、言いたいことを言わせ合える感じ。

学生時代を振り返ると、同じ思いであの頃の記憶を掘り起こせる人って思うほど多くないんじゃないだろうか。私にとっては腹を抱えるほど面白かった出来事も、他の人にとっては必ずしもそうじゃなかったはず。無邪気な笑いは、残酷な笑いでもあった。

気安くいじったり、からかったり、それで言い合いになって、口もきかない数日を経て、あの時はごめんとかなんとかいって仲直りしたこともあったけど、それはただきれいごととして、私の記憶に残っているだけかもしれない。本当のところはわからないけど、無邪気にじゃれあった思い出を共有できていたら、それだけで幸せだなと、大人になった今は思う。

笑いながら目を覚ました私は、ただ単純にガハハと笑える感覚が懐かしかった。あぁ、私は今、彼らに甘えられてるんだな、甘えることを許してもらえてるんだなと、言葉にするとそんな柔らかな思いが胸に広がった。

仲良くなりたくて、つい意地悪してしまう子どもじみた私は、現にまだ子どもだったけど、しょうがねぇなぁーと受け止めてくれる彼らの優しさに守られていた。今じゃ考えられないくらい、荒っぽいコミュニケーションでつながっていた子ども時代。嫌なこともたくさんあったけど、自分にも他人にも嘘をつかず無邪気に生きられたのは幸福以外の何ものでもなかったのかもしれない。

今もあの頃と変わらない自分がいて、いつまでも大人になりきれない。突然相撲をとったり、歌い踊り出したり、「生まれ変わったら金持ちの猫になりたい」と将来の夢を娘と言い合ったり。母親として、大人としてどうなんだと自分を疑いつつ、ふざけていないと調子が悪くなる。

夢の中でばか笑いしていた私は何がおかしかったのかもう思い出せないけど、ただ笑っているのが楽しくておかしくて、私の喜びとはつまりはそういうものなのかもしれない。

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