はじめての救急車 2016.06.05

あんなに激しく泣いたのは初めてだった。いつもはすやすやと、滅多に寝くじもなく眠るムスコだが、昨日の夜はちがった。最初はぐずぐずといつものようにお茶を欲しがっているだけかと思ったが、だんだんと泣きかたが激しくなってとうとう最後にはのたうちまわるほどに大声で全身で泣き始めた。何を差しがしても拒否、抱っこをせがむけれど抱っこするとのけぞって降りようとするの連続。オットとふたりであれやこれや画策するも全部拒否。真夜中のマンションでこの大泣きをずっと続けているのもまずい、それに、もしかしたらどこか痛いのかもしれないと、私たちは救急病院へ行く事に決める。幸い、小児科の救急は徒歩10分もかからない近所にあり、ムスコのかかりつけの病院でもあった。しかし、あまりに激しく泣きわめくムスコ。この泣き声とのけぞる体を抱えて真夜中に外を歩くのもまずい、と救急車を呼ぶことに。

救急車はすぐに駆けつけてくれた。私もオットも、そしてムスコにとってもはじめての救急車だった。マンションの住民の方やご近所の方には夜のサイレンで起こしてしまったかもしれない。とても申し訳ない、そしてちょっぴり緊張した気持ちで、それでも一番はこの、まるで何かに取り憑かれたかのように泣きじゃくるムスコが心配な気持ちで、慌てて仕度した。私とオットがパジャマから着替えて外へ出ようとすると、はて。急にムスコがパタリと泣き止んだ。一瞬で静かな夜にもどる。マンションの下にはサイレンを止めた救急車が待っている。まずい、、これは、判断ミスか。。いや、とりあえず降りよう。

すっかりいつもの表情にもどったムスコを抱きかかえ下へ降りると、救急隊員の方が3名、救命胴衣に身を包み、緊迫した表情で待ち構えていた。キョトンとするムスコ。若干苦笑いの私とオット。「一旦、救急車へ入って下さい」と言われ、3人で初乗車。ムスコを抱いていて、なんとなく「あ、大丈夫そうかも。。」と感じつつも、この、緊急で来ていただいた救急車を前に、とりあえずことの流れを話す。じょじょに激しく泣いたこと。日中は特に変わった様子はなかったこと。どこかにぶつけたとか、ぐったりした様子はないこと。熱も嘔吐もないこと。。。聞かれ、答えれば答えるほど、「うん、やっぱりムスコ、大丈夫そうだ」と思ってきて、気まずさと申し訳なさから変な冷や汗の私。ふと、自分の格好をみると、なんとシャツを裏返しに着ていた。暗闇の寝室で大慌てで着替えたからシャツが裏返っていたことに気づかなかったのだ。余計、冷や汗がでる。一通り状況を聞いてくださり、念のため救急病院へ連れてってくれることに。「うん。念のため、念のため」と親としての責務を思いつつ、抱いているムスコの様子が緊急ではないことはなんとなく確信済み。

かくして、真夜中の救急病院へ家族3人救急車で乗り込んだ私たち。元気、ピンピンのムスコは眠さと不本意さと病院でされるアレコレに不快で再び大泣きをはじめる。これは、ただの子どもの大泣きのほう。嫌なだけで、痛いとか辛いとかはないほうの。だいたいこんな夜中に救急病院に来ている子どもたちはしんどくて泣く元気もなくぐったりしずかなに待ち合い室でうなだれているのに、ムスコの元気な泣き声が夜の病院に響き渡っている。救急隊員の方は最後まで「お大事に」と優しく声をかけ、帰っていかれた。泣きながら手を振るムスコ。

当然だが、一応、診察へ。先生が笑いながら出迎えてくれる。さすが先生。泣き声を聞けば、この子は元気だと分かるのだ。また、最初から状況説明。そして、気になっていることといえば、ムスコの食べ過ぎ、そしてウサギのようなう◯ちをしてちょっと便秘ぎみのことを伝える。おなか、せなかをトントンしてもらい、口のなかをみてもらい、無論問題なし。一応、おなかのエコーをみてもらう。ときどき、腸がひっついて痛くなる病気があるらしいとのこと。ムスコのおなかをみて先生が一言。「うわあ。う◯ちがいっぱいで何も見えんわ。」・・・・やっぱり。そうなんです。ほんと、食べ過ぎるわりにあまり出さないんです。。。この大泣きの原因が便秘がどうかは分からないけれど、そのほかは問題なさそうとのことで、やっとこさ、ほんとにほんとに緊急の問題はなしと大確信。体中の力がいっきに抜ける。ムスコ、大泣きをしながら、浣腸をしてもらう。

帰りはもちろん、徒歩で帰宅。ムスコは泣きつかれ、オットに抱かれながら寝始めた。あれだけ泣いたらそりゃ眠くなるよね。私たちも安堵と疲労で急に睡魔がやってきた。お調子者のムスコらしい、そして親初心者って感じの私たちらしい、はじめての救急車騒動。これじゃまるで、漫画の世界のようなお話だよと思いつつ、安心やら反省やらいろんな気持ちが入り交じり、そしてやっぱり最後にはムスコの平和な寝顔を見て癒されるのだった。

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