ふぉんとーく #1 游ゴシック・明朝
本日より、全く新しいブログメディアであるトビログに掲載されている記事の中から、えりすぐりのニッチなものをnoteでも公開していきます。毎週火曜日更新がこちらの「ふぉんとーく」ライターのまぐろかもにくがフォントについてひたすら語ります。
たかがフォントについて長々と話していくのかと思われていそうです。しかしTPOに応じたフォントの使い分けをすることで、情報の伝達がより細やかに行われることが期待できます。今回紹介するフォントは可読性と互換性に優れており、このフォントの主戦場(?)であるWordでの文章作成をメインシチュエーションに据えて執筆していきます。
游書体
游書体は字游工房というフォント制作会社が販売している10書体(游明朝体ファミリー・游明朝体五号かなファミリー・游明朝体36ポかなファミリー・游ゴシック体ファミリー・游ゴシック体初号かなファミリー・游教科書体・Newファミリー 游勘亭流・JKHandwritingファミリー・游築見出し明朝体・游築初号かな)を指します。本稿ではこの中でも利便性が高く、Office2016からデフォルトのフォントとして設定されるようになった、游明朝と游ゴシックに触れていきます。
游明朝
游明朝は「時代小説が組めるような明朝体」を目指して開発されました。初代のものは2002年に販売開始されました。公式サイトには、
文字の大きさの揃った現代的な明るい漢字と、伝統的な字形を生かしたスタンダードな仮名の組み合わせは、これまでの明朝体とは違う、游明朝体の大きな特徴です。(http://www.jiyu-kobo.co.jp/library/ymf/)
とあり、以下の画像からもわかるように趣がありかつ識字性に優れています。
(太宰治「斜陽」青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1565_8559.html)より引用)
かな、カタカナ、漢字それぞれの単体でも、すべての種類の文字を含んだ文章でも美しい表示がなされます。ひらがなとカタカナ、特にのハネ部分に古風さを感じることができる一方で、漢字はシステマチックな形状をしているという絶妙なバランス故に、頭に内容がスッと入ってきます。
「時代小説が組めるような明朝体」というコンセプトの通り縦書きではもちろん横書きでも読んでいて疲れにくいです。そのため、論文等の課題で明朝体という指定があった場合、とりあえず游明朝を選んでおけば無難です。また、游明朝の説明ページに
游明朝体ファミリーは文字の骨格は同じで線の太さだけを変えた従来のファミリーの考え方とは異なります。見出し用に特化した太いウェイトのBとEはフトコロを狭めに設定し引き締まったデザインとしました。その結果、漢字、仮名、英数字とも他のウェイトとは骨格が異なります。
との解説があり、太字指定をするだけで、読みやすい見出しが作れることが分かります。
※フトコロ:文字の内側にできる空間のこと。例えば「陽」という字の場合、の右上の「日」の線で区切られた内部はもちろんのこと、勿の画と画の間もこれにあたる。
こんな感じで引っ掛かりなく読めます。
游ゴシック
続いては游ゴシックについて。公式サイトによると、游明朝体と一緒に使うことを想定して開発されたとのことです。ゴシック体であるにもかかわらず、游明朝同様に和の雰囲気が少しだけ感じられかつ可読性に優れているフォントです。
公式に他のフォントとの比較を行いつつ開発の経緯を説明する文章がありました。私が下手に語るよりも分かりやすいので詳しく游ゴシックについて知りたい方はぜひ。
http://www.jiyu-kobo.co.jp/ygf-notes/
ちなみに…
上記のサイトでは游ゴシック、ヒラギノゴシック、小塚ゴシックの比較が行われています。どのフォントも可読性に優れた素晴らしいフォントだと断言できます。特にヒラギノゴシックはApple製品のデフォルトのフォントに設定されている点からも美しさが窺えるでしょう。
あくまで個人の評価ですが、それぞれのフォントを癖の強い順に並べると小塚>游>ヒラギノ、可読性で並べると微々たる差ですがヒラギノ>游>小塚だと思います。しかしWindowsにもMacにもインストールされているという点で、互換性(ある意味無難さとも言い換えられますね)は游ゴシックに軍配が上がるかなあと考えます。
また、筆者はこの3書体の中では游ゴシックが最も和風、小塚ゴシックが最もシステマチックな形をしていると感じています。
しかし、いざ游ゴシックを使ってみようとするとこんな壁に突き当たります。
游ゴシック何種類あるの!?
以下の写真は游ゴシックを名に冠したフォントたちが集結しているWordのフォントタブの部分のスクショです。8種類もある…
これらの8種類のフォントを表にまとめてみました。左側はデフォルトの太さ、右側はボールド(太字)です。
上から2-5番目の「Yu Gothic UI」が含まれるフォントと、それ以外の日本語表記の「游ゴシック」が含まれるフォントたちはそもそもの字形が大きく異なるのが分かります。「Yu Gothic UI」たちは縦に引き伸ばされたような形をしていて文章作成には向きません。
「Yu Gothic UI」たちを抜いても「游ゴシック」が付くフォントは4つあります。そして字形もほぼ同じように感じられます。しかし、もしWordで文章作成をするのであれば、上から6個目の游ゴシック(MediumやLightのついていない普通の游ゴシック)の使用を強くお勧めします。なぜなら、標準のウェイトとボールドの太さの差が明確だからです。強調部分を太字にするだけで分かりやすくかつメリハリのある文書が完成します。
一方で、PowerPointを使用する際は見出しは游ゴシックのボールド、本文は游ゴシックMediumがおすすめです。そして本文の強調したい部分も、見出し同様に游ゴシックのボールドを用いるとよいでしょう。いちいちフォントを変える必要性がありますが、遠くから見た時からの見やすさを担保するにあたって普通の游ゴシックの細さは少し心もとない故、手間をかける価値はあります。
ちなみに先ほどのスクショに写りこんでいたメイリオも優秀なフォントの一つではありますが、印刷物にはむかないと個人的に感じています。
行間広がる問題とその解決
ここまで説明してきた通り、游書体は間違いなく使いやすいフォントです。しかし、Wordで游書体を11pt以上の文字サイズに設定したら行間が一気に開いてしまう現象が発生します。しかしこの問題は意外にも簡単に解決されます。下に手順を載せます。
①範囲を選択
行間を狭くしたい部分を選択します。文章全体に適用したいのであればCtrl(Cmd)+aで全選択してしまいましょう。
②段落の設定を開く
段落タブの右端に小さい矢印の付いたマーク(下図)があります。それをクリックしてください。
③設定内のチェックを外す
「1ページの行数を指定時に文字をグリッド線に合わせる(W)」のチェックマーク(下図)を外します。
④「OK」を押す
⑤選択を解除する
これで行間が狭くなりました!
ちなみに行間の既定は1ですが、見やすさが向上するので学校の課題等の行間を広げることで「量を盛っている」と疑われる場合を除いて、行間を1.15にするのがおすすめです。
まとめ
Wordを使う際のとりあえず無難な設定はこちらです。
見出し:游ゴシックの太字
本文:游明朝or游ゴシック
(本文が11pt以上なら)全選択(ctrl/cmd+A)→「1ページの行数を指定時に文字をグリット線に合わせる」のチェックを外す
ちなみに、筆者は見出しは游ゴシックの太字(14pt)、本文は游ゴシック(10.5pt)で強調したい部分は太字にしています。またスペースに余裕があるときは行間を1.15にしています。また先に述べたように、PowerPointを使用する際は見出しは游ゴシック、本文は游ゴシックMediumがおすすめです。
游書体は認字性に優れかつ趣のある書体でそのうえ互換性の観点からも使いやすいです。本稿が游書体の魅力を最大限に引き出して、文書やスライドがより良いものになることのお手伝いになることを願っています。
次回は私の好きな英語フォントの話です。お楽しみに!
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