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今日くらいは「あと一人」って大声で叫ばせてくれ【6/2 対マリーンズ戦○】

「そうなってほしくないな」と思っているときに限って、本当にその通りになってしまうものだ。何の根拠もないのだけれど、どういうわけかそんな風にできている。

9回までに1点のリードしか奪えなかった。森下翔太の先頭打者ホームランで幸先良く先制したが、この日もまた1点差でマリーンズ打線とZOZOマリンの応援と対峙することになった。

ただの相手じゃない。引き分けを挟んで11連勝中だ。しかも4試合連続で9回に同点に追いついている。この執念は、ちょっと理屈では説明できない。2日前はJ.ゲラが、昨日は岩崎優が1点差を守れなかった。

マリーンズファンの歓声が響く中、帽子を脱いで目を閉じるいつものルーティン。最後の3アウトは、先発の才木浩人に託された。

才木がすごいピッチャーなのは分かっている。
でも、今のマリーンズがすんなり逃がしてくれる訳がないことも分かっている。

だから先頭の小川龍成が外野の間に落ちるヒットを打っても、続く高部瑛斗が内野安打でつないでも、どこか俯瞰してみている自分がいた。今思えば、こうでもしないと受け入れられなかったのかもしれない。落ち込んだら、そのまま飲み込まれてしまいそうだった。

マリーンズの「チャンステーマ5」が流れ始めた。イントロを聞くだけで、記憶が鮮明に蘇ってくる。昨日の試合で追いつかれたときも流れていた曲だ。

0アウト1,2塁でバッターはN.ソト。
もう、ペース配分はしない。ピンチになるまでは相手にストレートを意識させる攻め方をしてきたけれど、ここからは全部が勝負球だ。2球で追い込んだけれど、低めに落ちるフォークには反応しない。集中している。ここまでの試合もそうだった。人が変わったかのように集中力が上がって、決め球に手を出してくれない。どうする。
才木が投じたのはインハイのストレートだった。投げきった。打球が詰まってショートの正面に力ない打球が飛ぶ。ボールがセカンド、ファーストと送られて、併殺が完成した。

アウトは2つ取れたけれど、ちっとも油断できない。まだG.ポランコがいる。ヒットで同点のピンチなことは変わらない。マリーンズファンの声量はまったく落ちていない。

リードして9回2アウトを迎えたとき、タイガースの応援席からは「あと一人」のコールが響く。
SNSで色んな人の意見が見える時代だ。この応援が嫌われているのも知っている。相手を煽っているように聞こえるから、よく思われていないのも知っている。

でも、黙って見ていられるか。
だって才木が投げているのだから。

あと一人コールで相手を煽るつもりなんてない。少なくとも僕は相手を煽るつもりでは言っていない。
才木が最後の力を振り絞って立ち向かっている。
ラストスパートだ。もう少しだ。がんばれ。その気持ちを込めて叫んでいる。

マリーンズの応援はすごい。あれは味方の背中を押すのと同時に、相手に重圧をかけて潰しにきている応援だ。ライトスタンドのファンも一緒に戦っているのがよく分かる。ゲラもザキさんも応援に飲み込まれた。もうあんな思いをするのはゴメンだ。

この日の僕はテレビで試合を見ていた。けれど、もし球場にいたら大声で「あと一人」と叫んでいたことだろう。相手の応援の恐怖を振り払うかのように。

ポランコが高めのボールを見逃し、2ストライクと追い込んだ。そしてこの日の116球目。セカンドゴロに打ち取り、才木が笑顔で喜んだ。この瞬間、タイガースの連敗は4で止まった。

今シーズン2度目となる、1-0での完封勝利。
才木がいるチームのファンでいられて、僕は幸せだ。

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