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試合の最後を締める者【8/8 対ジャイアンツ戦○】

セ界で1番美しい岩崎優のストレートがアウトローに投じられる。いつも以上に腕を大きく振っているのに最高のコースに決まった。
梅野隆太郎のミットに収まってから球審の右手が挙がるまで、ものすごく長い時間に感じられた。テレビ中継で見ていたらそのようには感じなかったはず。東京ドームの観客席で緊張を共有しながら試合の行く末を見ていたから、そんな風に感じたのかもしれない。

熱くなりっぱなしの外野スタンド応援席とは対照的に、岩崎は冷静だった。1点差のこの場面、最も気をつけるべきは出会い頭の一発。長打を防ぐためなら歩かせたって構わない。中田翔はストレートの四球で勝負を避けた。その代わり後続は絶対に打たせない。吉川尚輝は空振り三振に斬った。梶谷隆幸にヒットを打たれてピンチを迎えたけど、単打なら得点にはつながらない。だけど得点は絶対に許さない。最後は秋広を見逃し三振に抑えて、試合を締めた。
バッターの秋広優人が肩を落とし、岩崎が力強く吼えた。
いつもは淡々と抑える岩崎がこんなに熱くなっているところ、初めて見た。その力強く握られた拳に、この試合にかける思いを感じた。だから僕も一緒に拳を握った。


僕たちは「岩崎につなげばなんとかしてくれる」と簡単に言うけれど、最終回を任される岩崎の心の内はどんなものなのだろう。

先発・西純矢の追撃のタイムリー。
追い込まれながらも粘って打った森下のホームラン。
内野と外野の力を合わせてつかみ取った中継プレーのアウト。
大ピンチを力で押し切ったK.ケラーの奪三振。

あまりにも色々ありすぎた。もし最終回にひっくり返されたら、これらのナイスプレーはすべて過去のものとなってしまう。ひとりで背負うにはあまりにも大きすぎて、重すぎるんじゃないだろうか。
少しでも肩代わりしてあげたいけど、僕たちファンはグラウンドの外から結末を見届けることしかできない。その代わり、マウンドに上がる岩崎に声援とも叫びとも言えないようなエールを送る。

帰りの電車で、岩崎が最後の球を投げて力強く吼えるシーンを頭の中で繰り返し思い出した。3時間半を超える熱戦のなかでわずか数秒のシーン。けれど、最後のガッツポーズが脳に焼き付いて、離れなかった。

岩崎が中心にいるこのタッチを最後に見られたら、たとえどんな苦しい試合だったとしても「来て良かった」って思えるんだ。


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