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打席を待つ小幡竜平の姿から感じたもの【3/8 対スワローズ戦●】

自分が現地観戦している日に応援している選手がエラーやまずいプレーをしてしまった― 野球ファンなら誰しもが経験したことがあるはず。
だがそれが1イニングで2度起こったとなったらどうだろうか。少なくとも僕はそんな経験はしたことなかった。今日この日までは。

守備から途中出場した小幡竜平は、8回の守りでエラーを2つ記録した。別の選手のエラーも重なり、タイガースはこの回で5点あったリードをひっくり返されて逆転負けした。

1個目のエラーが起きたあと、僕はずっと小幡にカメラを向けていた。ある選手にまずいプレーが出てしまったあと、僕は意識的にその選手の写真を多く撮るようにしている。彼らがやり返すところ、その後起こる(と信じている)良かったところを写真に残したいからだ。だから小幡のところにゴロが飛んできたときも、ファインダー越しに彼のことを見ていた。

打球が向かってきた瞬間、「あっ、まずいかも」と本能的に思ってしまった。動作に入るまでの動きがいつもとは違うように見えた。
声に出す間もなく、打球が小幡の股下を抜けていった。
宿泊先のホテルに戻って試合のハイライトを見た。明らかに足が動いていなかった。僕が知っている小幡ではなかった。
スワローズにこの回6点目が入り、タイガースは逆転された。

9回2アウト、ヘルメットを被った小幡がベンチから出てくる。前の打者が出塁すれば小幡まで打順が回ってくる。滑り止めのスプレーをかけて、バットを構える。バッターボックスから離れた場所で、相手投手を鋭く見つめる小幡の表情が見えた。「自分に回ってこい」「やってやるぞ」と言わんばかりの鋭い眼差し。
それを見て、僕は少し安心した。小幡がまだ闘う姿勢を失っていないように見えたから。こんなことでめげる人じゃないって信じていたから。

いくつかある小幡の持ち味の1つに「反骨心」があると、僕は思っている。まだ2軍で腕を磨いていた頃、同じ年のドラフトに指名された根尾昂・小園海斗らに対して「ライバル心ある」「負けたくない」とコメントしたのが印象的だった。昨シーズンも木浪聖也が絶対的なポジションを確立しつつある中、出番が巡ってきたときは攻守で良いプレーを見せた。小幡は自らの困難を力に変えられるタイプだ。
回ってくるかどうか分からない打席を待つ小幡には、その反骨心が見え隠れしているように感じた。ああ、僕の知っている小幡だ。

この日、小幡に打席が回ってくることはなかった。試合終了の瞬間をネクストバッターズサークルで迎え、バットを持ちながらベンチへ下がっていった。

次だ次。
こんなことでくじける選手じゃないって、僕は知っているから。

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