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お前が決めろ!指差す先に込めた思い【10/19 対カープ戦○】

すべては大山悠輔のツーベースから始まった。

長打になるか微妙な当たりだったけれど、いつも全力で走る大山なら必ず2塁まで行けると思った。膠着していた試合が一転、サヨナラ勝ちのチャンスに変わる。

佐藤輝明は打ち取られ、S.ノイジーは勝負を避けられた。2アウト1,2塁で7番の坂本誠志郎が打席に入る。甲子園球場の声援がますます大きくなる。

ピッチャーはカープのクローザー・栗林良吏。初球はインコース低めに外れた。2球目も高めに外れる。坂本の表情は変わらない。外低めに投じられた3球目もボールになる。甲子園はどよめきが大きくなった。ここまでキャッチャーとして耐えて守り続けた坂本に決めてほしい気持ちもあったけれど、どうやら今日は彼の日じゃないみたいだ。

4球目も大きく外れた。キャッチャーが捕球するのと同時に坂本は1塁へ歩き出し、ネクストバッターズサークルにいるバッターへ指を差した。その先には木浪聖也がいる。

つないだぞ。お前が決めろ―

指を差す坂本の姿を見て僕は確信した。昨日の死球でバットを放り投げたのは怒っていたからじゃない。試合に勝ちたい気迫があふれて形に出ていたんだ。普段の試合でも気迫を見せる場面はあったけれど、これほどまでに気合いの入った坂本は見たことがない。

こんな熱いエールをもらって燃えないバッターはいない。しかも今シーズン何度も結果を残してきた満塁の場面だったらなおさらだ。
シーズンの満塁打率.444。嘘みたいな数字がスコアボードに表示される。早々に追い込まれたけど、ここからがすごかった。高めをファウルにして狙っている球を待つ。栗林の決め球、フォークが落ちなかった。鋭い打球が1,2塁間を破っていく。甲子園の地鳴りがすごすぎて、実況の声が聞こえなかった。勝利を確信した木浪はベンチの仲間に向かって指を差していた。

木浪の方向を力強く指差した坂本。そしてそのエールを力に変えた木浪。ふたりが1,2塁上で激しく抱き合った。

彼らの良さがもっと広まってほしい。
この熱い男たちが戦う姿をもっと見ていたい。
最高の舞台まで、あと1つ。

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