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俺たちのスーパークローザー【3/21 対ドジャース戦○】

この日みたいな打ち合いの試合でも、あるいは1点を争うような息の詰まる試合でも、
球場にその名前が呼ばれたら、もう勝ちは目の前。
どんな試合展開でもその剛速球がうなれば、あとはもう打者が為す術無く打ち取られていくだけ。
この日のように最終回から前倒しで登板することもあっても、何くわぬ顔で試合を締めてくれる。
彼が投げれば、もう試合は決まったようなもの。

そんなスーパークローザーが、阪神タイガースに在籍していた。

ソウルで開幕した今シーズンのMLB。第2戦目はサンディエゴパドレスがロサンゼルスドジャース相手に勝利した。ドジャースは大谷翔平らシーズンMVPトリオが揃う強力打線。そんな相手に試合を締めたのは、R.スアレスだった。

最後のアウトを奪って、パドレスに今シーズン初勝利をもたらした右腕。さすがメジャーリーガーというような、ものすごい剛速球を投げている。そんなピッチャーがタイガースでプレーしていた。なんだか信じられないような話だけれど、タイガース時代と変わらない背番号75と特徴的なオールドスタイルのソックスを見て、あの舞台のマウンドに立っているのは僕たちの「スアちゃん」なんだって、改めて実感した。

スアレスは福岡ソフトバンクホークスからタイガースにやってきた。目立った成績を残せず、ホークスから戦力外通告を受けた。どうして戦力外になったのか不思議でしょうがないくらい、スアレスは大活躍した。160km近いストレートと打者のタイミングをずらすチェンジアップを武器に、スアレスは次々とセーブを積み重ねた。在籍した2年間で記録したセーブは67。いずれの年も最多セーブのタイトルを獲得した。

特にタイガース2年目の2021年シーズンは圧巻だった。
62登板、1勝1敗1ホールド42セーブ、防御率1.16、与四球8、被本塁打0
文字通り絶対的なクローザーだった。

この日のスアレスは8回途中からマウンドに上がった。22年と23年シーズンは中継ぎとして投げたスアレス。だがかつてのクローザー・J.ヘイダーの移籍に伴い、スアレスがクローザーを務めることになった。
本来の仕事場である9回を前倒しての登板。優勝争いしていた2021年を思い出す。どうしても落とせない試合が続いたシーズン終盤、スアレスは8回途中から登板することがあった。一般的には難しいと呼ばれるイニングまたぎも、タイガース時代のスアレスは難なくこなしてくれた。あの時と同じように、きっとチームから信頼を勝ち取ったのだろう。

前の投手が走者を残した状態での登板。だがスアレスはドジャースのM.ベッツに2点タイムリーを打たれてしまう。2アウト2塁で、大谷に打席が回ってきた。一打同点の場面だ。

野球ファンのみならず、日本国民が期待しているのは大谷の同点タイムリー、あるいは逆転ホームランだろう。僕だって大谷のことは1人の野球ファンとして応援している。
でも「スアちゃん」が出てきたら話は別だ。
彼が出てきた瞬間、僕は1人の野球ファンじゃなくてタイガースファンになるんだ。

スアちゃん、負けるな。

スアレスと大谷の対決は1球で決着した。
結果はファーストゴロ。失点こそしたが、リードは守った。

直後の攻撃でパドレス打線が得点を挙げ、スアレスに援護点が入った。スアレスは9回のマウンドにも上がり、三者凡退で試合を締めた。MLB通算2つ目のセーブとなった。

翌日、テレビのニュース番組でこの試合のことがたくさん報じられていた。もちろん8回の攻防も取り上げられた。ピンチで大谷がファーストゴロに打ち取られる瞬間を見るたび、「僕らのスアちゃんがやってくれた!」と嬉しい気持ちになった。
スポーツバーなどで試合を楽しんでいる野球ファンは大谷が打ち取られて残念そうな反応をしていたけれど、それすら気持ち良かった。

実を言うと、スアレスがMLBで活躍していることはもう知っていた。インターネットを使えばすぐに成績が調べられるし、SNSで映像を見ることもできる。でもそうじゃなくて、地上波で放送されたテレビにスアレスが映ったことが嬉しい。野球ファンに限らず多くの人が見ている中で、タイガースにいたスアレスが試合を締めたことが嬉しくてたまらない。

夢を叶えたスアレスに今さら「タイガースに戻ってきて!」なんて野暮なことを言うつもりはない。ただ、一緒に戦った時のことを今でも鮮明に覚えていて、チームが変わっても応援しているタイガースファンがたくさんいること、届いていたら嬉しいな。

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