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井上広大の野球人生が動き出す瞬間を目の当たりにしている【4/28 対スワローズ戦○】

6番・ライト。佐藤輝明がプロデビューした開幕戦の打順だ。4番の大山悠輔とJ.マルテ、J.サンズが中軸を固め、ルーキーだった佐藤輝の負担を軽くすることが目的だった。結果、この作戦は成功した。開幕3試合でスワローズ相手に神宮で3連勝。打線が大いに機能した。佐藤輝も2戦目で田口麗斗からプロ初ホームランを放った。

プロ初HRの打席の写真

頼れる先輩や外国人選手たちに守られながら、佐藤輝は順調に長打を増やしていった。たしかに不振を極めた時期もあったけれど、1年目の選手が残した成績としては十分すぎた。

3年目を迎えた佐藤輝のシーズン。今は5番を打っている。中軸の一角としてプレッシャーも勝敗の責任も4番と一緒に背負っていく打順。成績はまだまだ納得していないはずだけれど、言い換えればそれだけ伸びしろがあるということ。壁を乗り越えた選手は、前より必ず強くなれる。


そして今、タイガースはあのときの佐藤輝のように期待の長距離砲が6番を打っている。プロ4年目の井上広大(いのうえ こうた)だ。開幕は森下翔太にスタメンを譲ったが、2軍で自分の打撃を磨き直し、再び1軍に戻ってきた。
27日の対ジャイアンツ戦では二塁打二塁打三塁打の大活躍。4打点を挙げてお立ち台に上がった。今、ノリにノッている選手のひとりだ。大山と佐藤輝と井上。この3人がスタメンに並ぶ日を、僕たちタイガースファンはずっと夢見てきた。

クリーンアップよりプレッシャーが比較的少ないと説明した6番だけど、それが当てはまらないケースが1つある。
それは初回の攻撃。打席が回ってくるまでに得点が入らなかったという条件付きになるが、初回の攻撃で2アウト満塁の場面で出番が来るのが6番打者だ。
6番が打てば複数得点の可能性も高い、けれど打てなかったらランナーは溜めたのに0点。初回の攻撃だけにこの後の展開に大きく影響してくる。中軸と強引に勝負せず6番で必ずアウトを取るという戦略も、実力のある投手ならできるだろう。

そして、初回の攻撃で6番の井上に打席が回ってきた。スコアは0-0。2アウト満塁。前を打つ佐藤輝が四球を選んで井上まで打席を回した。

(フォアボールで満塁になったから初球狙ってほしいなあ)
(あっでもこの場面で井上相手に素直な配球してこないだろうなあ)

考える暇もなく、井上が初球のストレートを振り抜いた。鋭く捉えた打球がサード・村上宗隆の横を抜けていく。S.ノイジーが先制のホームを踏み、全力疾走の大山が2点目のホームを踏んだ。相手の本拠地だなんて関係ない。大歓声が神宮球場に響く。その歓声は、1塁ベース上で右手を挙げた井上に向けて注がれている。思わずこっちも笑ってしまいそうになる井上の柔らかい笑顔。その表情を1軍で見せてほしいとずっと願っていた。

井上広大にあって、大山悠輔や佐藤輝明にないもの。それは2軍での鍛錬の期間。正確に言えば大山も佐藤輝も2軍で調整した経験はある。でもシーズンの大半を2軍で過ごしたことがあるのは井上だけだ。

去年の8月に埼玉から福岡に引っ越して、僕はタマスタ筑後にタイガースの2軍戦を見に行くようになった。2軍戦の4番は井上だった。コーチたちと課題を持って少しずつ歩みを進めている井上と、1軍に上がれないもどかしさのような気持ちを割り勘したいと思った。いつまで2軍にいるんだよ~!と嘆き節で高みの見物をすることは簡単だけれど、この悔しい気持ちを一緒に持てたほうが、いつか上で大活躍する日が来たときに一緒に喜べる気がしたから。

猛打賞の翌日に先制の2点タイムリー。今、僕たちは井上のプロ野球人生が大きく動き出す瞬間を目の当たりにしている。
現地で見た人も、中継で見た人も、全員が目撃者だ。根拠というか、そうなってほしいなっていう願望は間違いなく含まれている。でもファンが選手に期待して、何が悪い。

強く振れ。遠くに飛ばせ。大丈夫、いけるいける。
1軍の舞台で打てるように積み重ねてきた井上のすべて、たくさんのファンに見せてやろうぜ。


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