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ハマスタで勝ったことより先に僕が1番応援している選手の活躍を語らせてくれ【8/4 対ベイスターズ戦○】

苦しかった横浜スタジアムでのベイスターズ戦。その連敗を止めた立役者、まではいかないけど勝利に貢献したとは胸を張って言える。
ベイスターズ・牧秀悟の逆転ホームランで1点をリードされたものの、8回の攻撃で先頭の森下翔太が出塁した。ボテボテの当たりだったが、森下の足が勝った。そして森下はベンチの方向へ走っていく。積極的な走塁が持ち味で脚力もある森下に代わって出てくる人は、ひとりしかいない。

背番号62の背中がベンチから現れた。森下の代走として起用されたのは植田海だ。
僕が応援する選手が出てくるのは決まって試合の終盤だ。
際どい当たりや長打でホームインするための代走ではない。盗塁で次の塁を狙うための、いわば超積極的な起用だ。

現地で観戦している試合で植田が代走で起用されたとき、僕は相手投手の牽制の数を数えている。この日のピッチャーは伊勢大夢。じっくり間を置いて、伊勢が1塁へ牽制球を投げた。植田が塁に戻る。タイミングを変えながら、走者を釘付けにするために牽制を重ねる。伊勢は牽制球を3回投げ、投げるふりの牽制を1度した。
自分が塁にいるわけじゃないのに、緊張して胃がせり上がりそうになる。

フルカウントになった5球目、この日初めて植田がスタートを切った。打者の大山悠輔は三振に倒れ、キャッチャーが2塁へ送球する。もし植田までアウトになったら一気に2アウト走者なしだ。緊張と興奮で、植田のスタートが良かったのかどうかすら分からなかった。キャッチャーからの送球を内野手が捕球できず、ボールが外野まで転がっていった。スライディングした植田が再び速度を上げて3塁へ向かう。外野からの送球が届く前に、植田が3塁を陥れた。打ち取ったと思われた内野のボテボテの当たりが、一気に1アウト3塁になった。植田が味方で良かった―心の底からそう思えた。

このチャンス拡大をきっかけにタイガースは同点に追いつき、最後は木浪聖也の3塁打で逆転した。
ミスできないと考えれば考えるほど、思いもしないプレーが飛び出すことがある。植田の見えないプレッシャーが、ベイスターズ陣の歯車を狂わせた。

逆転した直後のイニング、レフトの守りに入った植田のもとに打球が飛んだ。落下地点との距離を測るようにダッシュしながら、ボールを自らのミットに収めた。植田がスライディングする瞬間、まるで動きがスローモーションのように見えた。レフトスタンドと3塁側からはホームチームに負けないくらいの植田コール。植田がお客さんからコールを受けているところを初めて見た。自分のことのように嬉しかった。だから大きな声で僕もコールした。

「これが連敗している球場での試合の流れ、なんですかねえ……」

牧の逆転ホームランが飛び出した後、隣に座っている友人がささやくように言った。仕事終わりにハマスタに駆けつけて今季の敗戦をすべて見届けている彼の言葉だ。説得力がまるで違う。
先発の村上頌樹は1球に泣き、打撃陣は再三チャンスを作っても得点できなかった。何をやっても上手くいかないこの状況、流れのせいにもしたくなる。

けれど、植田の足がタイガース側に試合の主導権を引き寄せた。
植田の守りが主導権を相手側に渡させなかった。

僕が1番応援している植田は、そういうことができる選手だ。

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