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岡田彰布監督がどう思ったのか聞かせてほしかった【5/31 対マリーンズ戦●】

試合は9回に1点を失って追いつき、延長10回に力尽きた。この日3安打した前川右京に代打を出したことや、1点差の場面でDHを解除したことなど、ファン目線で「んん?」って思うことはあったけれど、問題はそこじゃない。
今日書きたいのは別の部分だ。

試合が終わった後、岡田彰布監督は取材に応じなかった。
「もうええわ」と一言だけ話し、球場を後にした。

そうか、この試合全体が漫才だったのか。
「どうも、ありがとうございました~」

……そんなわけあるかーい!!!!リアルじゃ!!


日々極限の状況で戦っているプロ野球で、失敗の数を0にすることはできない。勝敗がはっきり分かれる以上、そこには成功と失敗が結果として表れる。それはグラウンドで戦う選手はもちろんのこと、ベンチから指示を出すコーチや監督も同様だ。その成功と失敗は、ときに当人の間でコントロールできないこともある。

けれど失敗した後の自らのふるまいはコントロールできる。そして、上手くいかなかったときにどういったふるまいをするか、周りの人はよく見ている。4番の大山悠輔が皆から慕われているのは、どんな状況でも全力疾走を欠かさないからだ。
すべての勝敗はコントロールできないけれど、自らの言動はまだコントロールできる余地がある。

岡田監督のミスチョイスがあったと言わざるをえないこの日の試合。僕が普段から言葉を重んじているからというのもあるけれど、監督がどんなことを語るのか注目していた。

だが、何も語らなかった。
少しだけ、「ずるいな」と思ってしまった。

試合の中で良くないプレーが出たとき、岡田監督はハッキリとコメントする。今の監督では珍しいほうだ。カープの新井貴浩監督のように選手のことをかばう人も多い。

どちらが良いかを議論するつもりはない。
岡田監督が言いづらいことを厳しく言うことで、チームがより一層引き締まる効果もあると思っている。
だがその厳しさは、自分自身にも向けられないと意味をなさなくなってしまう。例えば職場に、部下のミスには厳しくて自分のミスには見向きもしない上司がいたら、周りの人はどう感じるだろうか。

何も聖人君子になってほしいというわけじゃない。ただ、選手やコーチを束ねるリーダーとして、「この人に付いていきたい」と思える監督でいてほしい。采配や選手起用でチームを勝たせるのと同じくらい、いやそれ以上に「この人が率いるチームを勝たせるんだ」と選手に思わせてくれる、そんなリーダーであってほしいのだ。

岡田監督が「勝たせたいリーダー」に変わった試合を、僕はよく覚えている。

昨シーズンの8月18日、熊谷敬宥が盗塁を試みるも、京田陽太にベースをブロックされる形でアウトになった試合だ。1度はセーフとなるも、リクエストで判定が覆った。
岡田監督はベンチから飛び出して猛抗議した。ものすごい剣幕だった。監督が退場にならないように平田勝男ヘッドコーチがフォローに入っていたが、お構いなしだった。

「俺たちの監督が仲間の代わりに怒ってくれている」。

そんな監督の様子を、選手たちは真剣な目で見つめていた。冷淡な表情で見ている人は誰もいなかった。選手たちが監督をじっと見つめていたのを、僕は鮮明に覚えている。
結局この試合は敗れたけれど、翌日からタイガースは6連勝した。そして優勝を決めた試合までの勝敗は17勝3敗。監督が抗議した試合を境に、選手の気迫がより一層強くなったように感じた。

果たして今、監督が内に秘めている勝利への執念はどれくらい選手たちに伝わっているのだろう。

監督に同情したくなる部分も多少はある。接戦に競り負けて、精神的にもキツい展開が続いているのは事実だ。監督だって人間だから、追い込まれているときに冷静な判断を「常に」できるかといったら、決してそんなことはないだろう。

だがそんなときに、ぶっきらぼうな態度をとったりふてくされたりしたら、グラウンドに立つ選手たちはどう思うだろうか。選手たちは監督のことを信頼し、力になりたいと思ってくれているはず。本人にその意図はなかったとしても、言動1つでその信頼を裏切ることになるかもしれない。

決して良いとはいえないチーム状態のときに、もし信頼関係まで崩れてしまったら。
……僕はそんなタイガースは見たくない。

僕が見たいのは傍観者のようにふるまう岡田監督じゃない。
選手と一緒に戦ってくれる岡田監督だ。

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