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岩崎優 ひとりきりのブルペン【9/2 対スワローズ戦○】

久しぶりに神宮球場の外野席に来た。大学生だった頃は授業の終わりにいつも通っていたタイガースのレフトスタンド。応援団の熱を感じられるのも楽しいけど、ポール際の席はブルペンの様子がよく見える。地方球場などの例外を除いて、ブルペンの様子が分かるセリーグの球場は神宮だけだ。中継ぎ投手が「ブルペンはチームだ」ってコメントする記事を何度も読んだけれど、神宮で試合を見るとその意味がよく分かる。

継投に踏み切るタイミングが難しい試合だった。それはすなわち、待機するブルペンも慌ただしくなることを意味する。先発の青柳晃洋が4回に3点目を失うと、浜地真澄と及川雅貴がベンチから立ち上がってブルペンのマウンドで投げ始めた。
中盤以降は島本浩也と桐敷拓馬が投げ始めた。背番号36の浜地と37の及川。背番号46の島本と47の桐敷。背番号が1つ違いのコンビが入れ替わり立ち替わりでブルペンに入って準備を進める。浜地と及川がこの日の出番は無かったが、少なくとも3回はブルペンで投球練習をしていた。

投球練習をする及川

そんな展開が読みづらい試合も、ついに最終回の守りを残すのみとなった。
あれだけ人の往来が激しかったブルペンが、急に静かになる。誰もいないマウンドに背番号13の岩崎優がゆっくりと向かった。外野席のファンは最終回の攻撃に期待して声を出し、応援メガホンを力強く叩いている。ブルペンの岩崎はときおりグラウンドの戦況に目をやりながら、ゆっくり投球練習を始めた。

柔らかい下半身を駆使した特徴的な投球フォーム。後ろ側から見ても岩崎が投げていると分かる。けれども、いつも試合で見ているときと比べて、フォームがゆったりとしていた。あえて力を入れずに投げているように見える。

(練習ではこんな感じなんだ)

グラウンドでは近本光司が打ち取られて2アウトになった。別のブルペンキャッチャーがブルペンのバッターボックスに入る。打者がいることを想定した準備だろうか。
次の瞬間、岩崎の投げる球が強くなった。徐々に試合で見ているときに近いボールになっていく。もうすぐだ。岩崎の出番が近づいている。見ているこちらまでドキドキしてきた。

9回の攻撃は三者凡退で終わった。岩崎が最後の投球練習を終えて、及川からペットボトルを受け取る。水を少し口に運んでからC.ブルワー、久保田智之コーチ、浜地の順にグータッチを交わす。小走りでマウンドに向かおうとした瞬間、3塁側のタイガースファンから大きな拍手が巻き起こった。遠ざかっていく岩崎の背中が頼もしい。

マウンドにはキャッチャーの坂本誠志郎が待ち構えている。一言二言会話をして、それぞれの持ち場に戻った。マウンドで投球練習を終える。これで全ての準備が整った。
後は自分の力を存分に発揮するだけだ。何の心配もいらない。

この日、岩崎はキャリアハイに並ぶ28セーブ目を挙げた。


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