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植田海を応援しているから、僕は相手のプレーを称えることにした【6/30 対スワローズ戦●】

8回表に5点目が入ったとき、「今日の出番はないな」と思った。その目論見は外れた。直後の守りで逆転されて迎えた9回表。同点のランナーが塁に出た。
出塁した前川右京と入れ替わりで、僕が1番応援している選手が出てきた。

結果、この試合は植田のタッチアウトでゲームセットになった。植田は本塁でタッチアウトになった。本塁上で悔しそうにうつむいていた植田の顔を、僕はしばらく忘れられなさそうにない。

試合中継が終わったあと、勝敗を決めたプレーをもう1度見てみた。見るのはつらかったけど、該当シーンを何度も繰り返し再生した。

バッターは佐藤輝明。レフト方向に打球が高々と上がり伸びていく。スワローズのレフト・並木秀尊は背走で打球を追いかけていた。が、途中で追うのをやめてフェンスの前で止まった。途中で打球が捕れないことを悟り、跳ね返ってきたクッションボールを無駄なく捕る方に切り替えた。

そして見立て通り、打球はフェンスに当たって並木の正面に転がった。神宮球場のフェンスの跳ね返り方を熟知しているからこそのポジショニングなのだろう。並木はくるっと半回転してカットプレーに入っている長岡秀樹にボールを送った。三遊間の深いところで長岡がボールを受け取った時点で、1塁走者の植田は3塁ベースを蹴っていた。

長岡は肩が強い。だが力任せにバックホームするのではなく、捕る寸前でワンバウンドするような低い球を投げた。すべては、待ち構えるキャッチャーの松本直樹が捕りやすくするために。

長岡のバックホームは、ホームベースからほんの少し3塁側に寄ったところに送られた。これならキャッチャーの松本は捕球と同時にランナー目がけてミットを動かさずに済む。捕球とタッチを同時に行うと、その動作の流れでミットからボールがこぼれる可能性もゼロではない。松本は本塁に突っ込む植田を待ち構えて、後はミットで走者に触れるだけだった。頭から突っ込んだ植田にタッチをする。球審が鋭いジェスチャーでアウトを宣告した。

何が言いたいかというと、スワローズの守備陣に一切のムダはなかった。並木のクッションボールに長岡のバックホーム、そして松本のキャッチ。どれか1つでもミスが生じていたら、植田はセーフになっていたはずだ。
だったらもう「今日は相手がすごかった」と言うしかないじゃないか。この状況でベストなプレーをしたスワローズの守備がすごかった。

植田が3塁を蹴ったところで回すべきとか止めるべきだったとか、僕はそこの議論はしない。そこに深い理屈はなくて、僕の美学に反する。もし近いシチュエーションが再び訪れたときにどうすべきか、そこの反省と改善はチームがすることだ。僕がこうして書き残したとて、しょせんは外から見たファンの意見でしかないのだ。

植田が生きているプロ野球の世界は、勝負の世界だ。そこには勝った者と負けた者が存在する。残念ながらいくら応援している選手が好きだからって、全ての勝負に勝ってくれる訳じゃない。そして今日は、スワローズの守備が植田に勝った。互いに全力を尽くしているからこそ、こういう結果になる日もある。むしろ、ここまで完璧に守ってやっとギリギリのタイミングになるくらい、植田の脚は驚異的なのだ。

勝敗がはっきりするということは、次は勝つかもしれないとも言い換えられるはず。プロ野球はトーナメントではない。勝って負けてを繰り返して、日程は進んでいく。

だから、今の僕はこう思っている。
惜しかったな。次は頼むぞ。

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