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岩崎無双【8/25 対カープ戦◯】

クローザーはチームの勝利とともに全てを背負ってマウンドに立つ。
誇張表現でもなんでもなく、その通りだと思う。
 
 
MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島での試合は1勝1敗で迎えた。逆転優勝に望みをつなぐためにはこの3戦目は負けられない。そんなことは選手たちもファンもきっと分かっている。
 
初回に先制点を取られるも、森下翔太の3ランホームランで逆転した。中盤以降も順調に得点を重ねた。だがここは首位カープの本拠地マツダスタジアムだ。ここですんなり終わったら、カープは首位の座をキープしていない。
7回、カープの反撃が始まった。先頭打者がタイガース野手のエラーで出塁した。マツダスタジアムがドッと湧いた。大歓声と赤い観客席が、ここで味わった色んな記憶を呼び起こすスイッチになって、嫌な思い出が蘇ってくる。
 
逃げ切りを図るつもりで送り込んだ石井大智は1つもアウトを取れなかった。カープの勢いを止めるためにマウンドに上がった桐敷拓馬も内野ゴロとタイムリーの間に2点を失った。タイガースが誇る左右のリリーフを出して3点を取られた。
 
こうなると、後を投げるピッチャーにも重圧がかかる。
J.ゲラもヒットで先頭打者を出した。矢野雅哉には157kmの渾身のストレートを弾き返された。1アウト1,2塁のピンチ。ゲラはこの回31球を投じてなんとか無失点に抑えた。だが依然として、試合のムードはカープに傾いている。
 
石井も桐敷も点を取られた。ゲラは抑えたけれどピンチを背負って守りの時間が長くなった。そしてここはマツダスタジアム。点差は2点あるとはいえ、状況は最悪に近い。
タイガースの砦、岩崎優が27個の中で1番重たい3つのアウトを取るためにマウンドに上がった。

マウンド上の岩崎はポーカーフェイスで知られる。打たれてもピンチを背負っても、マウンドで投球を続けているうちは表情が変わらない。
そのはずなのに、この日の岩崎はいつもと違って見えた。いつも通り冷静に見えるのに、眼光は鋭い。静かな闘志が奥底から見え隠れしているようだ。
 
「今日は絶対に落とせない」―
 
先頭の秋山翔吾は高めのボールの出し入れで空振り三振に切った。続く野間峻祥は3球勝負で内野ゴロに打ち取った。反撃する隙すら与えない。絶対に相手に主導権を渡さない。岩崎が持っているもの全てをぶつけて手強い2人からアウトを奪った。
小園海斗は変化球2つで空振りを奪った。打ち気の小園を逆手に取った巧みな投球。相手の勢いさえも力に変えてしまう岩崎。この時点でもう決着はついた。

3球目、小園はバットに当てるのが精一杯だった。力ないゴロが内野に飛んだ。
わずか10球。カープファンが期待する間も与えずに試合は終わった。
 
仲間が打ち込まれても、岩崎だけは決して崩れない。
だから僕たちは、このピッチャーがゲームセットの瞬間にマウンドにいてほしいと思うのだ。

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