どんな時も冷静に、変わらずに【4/27 対ジャイアンツ戦○】
試合が終わった最後の1球を、もう何度も繰り返し見ている。伊藤将司がこの日投じた106球目。キャッチャー坂本誠志郎が外低めに構えるミット目がけて、直球が吸い込まれていくように伸びていった。伊藤将の寸分違わない正確なコントロールと、あのダルビッシュ有が絶賛した坂本のキャッチング。その2つが共演する様は、まるで何かの芸術作品みたい。
ストライク。見逃し三振。ミットにボールが到達して、一瞬の静寂が歓声に変わった。
約1ヶ月遅れの開幕戦。ほかのピッチャーなら遅れた分を取り返したいとなって、普段以上に気合いが入ってもおかしくない。同じ日に今季初先発したホークスの森唯斗はこの日出場した誰より声が出ていた。それも個性だ。一方で伊藤将のピッチングはまるで「凪」。あまりにも静かな立ち上がりに拍子抜けしてしまった。左手を高々と上げる特徴的なフォームから、低めにコントールされたボールを淡々と投げ続ける。彼のピッチングだけを見ていると、まるで低めに投げ続けることがいとも簡単な行為のように思えてしまう。絶対そんなことないのに。
伊藤将の復帰を打線も後押しした。序盤2回で8点のリード。終盤にも加点して、最終的にリードは15点になった。これだけの大量援護があっても、全く気が緩まない伊藤将。
「今日は勝てそうだな」。「1点くらい取られてもいいかな」。表情を緩めずにベンチ前でキャッチボールする伊藤将に、そんな気持ちはなかったのだろう。点差があったから大胆に行けた部分もあったのかもしれないが、この日の伊藤将はたとえ援護点が15点だろうが3点だろうが1点だろうが、変わらず淡々と投げ続けているような気がした。それって、誰にでもできることじゃない。
長いペナントレースでは浮き沈みが激しい時期も当然ある。嬉しさに喜びを爆発させる日もあれば、もどかしてどうしようもない日だってある。それでも、伊藤将はどんな時でも冷静に、変わらずに、自分の良さが詰まったボールを淡々と投げ続けるのだろう。そんなピッチングでしか動かせない、そんなピッチングを見て興奮したい日だってある。
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