見出し画像

「岡留英貴に託したい」と思える日が来ますように【2/11 紅白戦】

キャンプ開始から約10日しか経っていないこの時期の紅白戦で、応援しているチームの投手が球速150キロ近い球を投げたら、あなたはどう思うだろうか。
「おお、すごい」という感情より先に「おいおい開幕まで時間あるのに飛ばしすぎだよ」という心配に近い気持ちが来るかもしれない。

岡留英貴。
紅組の5番手として登板したこの右ピッチャーの投球を見て、僕は今年にかける思いを感じたのだ。

先頭を初球で打ち取って迎えた渡邉諒の打席。岡留が投じた初球はキャッチャーの構えとは違うところにいったが、球場のスピードガンには151キロと表示された。3球目は渡邉が打ちに行こうとしたところに食い込むインコース高めの球。バットの根本に当たりファウルとなる。球速は152キロ。昨シーズンの岡留が試合で記録した最速に並んだ。
右のサイドスローから投じられる岡留のストレートはシュート気味に変化する。そのボールを嫌がっているのは渡邉のリアクションを見ても明らかだった。
追い込んでからの6球目。アウトコースに投じられたスライダーに、渡邉のバットが空を切った。
この日、岡留は2イニングを投げることになっていた。だが2軍でも回またぎの経験はほとんどない。そんな心配をかき消すように、岡留のボールがうなりをあげる。追い込んでからアウトコースにこれ以上ない球が行く。球審が見逃し三振をコールした。テレビを見ながら思わず「おお~っ!」と声をあげてしまった。
右のサイドスローで直球がシュート変化するから、右打者はどうしてもインコースが怖くなる。踏み込んで打ちに行ったら思いっきり詰まらされるかもしれない。そんな意識が常につきまとう。その結果、アウトコースがより遠く感じるようになる。そんなときに外いっぱいに最高のボールが来たら、手を出すことすら難しいだろう。

岡留は巡り合わせの悪い投手だった。昨シーズンのキャンプ中に行ったとある練習試合で岡留は大荒れのピッチングをしてしまう。僕はチーム事情の裏側までは分からないけれど、この結果で首脳陣の評価が変わってしまったという見方をする人もいる。たった1試合で変わってしまうのかと思ったが、オープン戦で岡留の出番はなかった。
ペナントレースが始まると2軍での好成績が評価されて、岡留は何度か1軍に昇格する。だが肝心の登板機会は全然巡ってこなかった。1軍にいるのに2週間以上出番がないこともあった。別のリリーフの状態が戻ったとみたら、入れ替えの対象になるのは決まって岡留だった。投げる機会もなく2軍に帰っていった。
要するに、昨シーズンの岡留は1軍のチームで信頼を掴めなかったということになるのだろう。なんと厳しい世界だ。正直不憫だったとも思っている。

1軍の試合を見に行っても練習中の写真しか撮れなかった

しかしこういう解釈もできる。この時期の実戦の重みをいま最も分かっているのは岡留である、と。去年の悔しい経験を知っている岡留だからこそ、実戦の時期に早いも遅いもない。岡留のなかで勝負はもう始まっているのだ。

去年は試合がほぼ決まっている状況で「じゃあ岡留を使ってみようか」という感じでしか起用されなかった。でも今年は「ここは岡留に託したい」という場面が増えることを願っている。それはつまり、岡留が1軍のリリーフ陣で揺らぎない信頼を築いた何よりの証なのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?