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今年は小野寺暖の成長を見守るシーズンなのかもしれない【8/19 対ベイスターズ戦○】

どうして毎日のように行われているプロ野球の試合を見ているのかと聞かれたら、日々の試合を通してちょっとずつ頼もしくなっていく選手やチームを見届けたいから、と答えたい。

長いシーズンのある試合では上手くいかなかったことがあっても、シーズン後半の別の試合ではできるようになった。巡ってきたチャンスで自分の力を発揮できるようになった。こういう瞬間を目の当たりにすると、時間作って試合見続けて良かったなあという気持ちになる。長く続けて試合を見ていることのマウントを取る意図は全くないけれど、こういう楽しみ方ができるプロ野球は最高だ。

例えばそう、タイガースの小野寺暖は僕のプロ野球の楽しみ方にすごくマッチしている選手であるといえる。

小野寺は2019年の育成ドラフトで指名された外野手だ。プロ2年目の途中で支配下契約を勝ち取り、2軍では敵がいないくらい打ちまくった。小野寺はヒットを量産し、ファームの首位打者と最高出塁率のタイトルを手にした。

では1軍で順調に出番を増やしたかというと、そんなことはない。チームが打てる選手を欲しているタイミングで何度も1軍に昇格するも、1軍投手陣の壁に阻まれて持ち前の打力は発揮できなかった。ここ2年の1軍成績は打率1割台に終わっている。

福岡に引っ越してから、僕はタイガースの2軍戦を見に行くようになった。確かに小野寺の打席での対応力や打球の速さは、ほかの選手とくらべて1つ抜けているように感じた。これなら2軍でやることがないのもうなずけた。
だからこそ思うような活躍ができない1軍の厳しさを改めて感じたし、小野寺に対して「なんとか突き抜けてほしい!」という気持ちを抱くようになった。

6回の攻撃、3番・ライトで出場した小野寺にチャンスで回ってきた。中野拓夢に送りバントを命じて作ったチャンスだ。
だが小野寺は初球と2球目を見逃して追い込まれてしまった。ヒットを打っているときは積極的なアプローチが目立っている小野寺にとって「らしくない追い込まれ方」だったかもしれない。

3球目。ベイスターズバッテリーは高めのボール球を要求した。が、小野寺はこのボールに反応した。高めの球を追っつけるように打つ。本来なら飛距離が出にくい打ち方だけど、小野寺は右方向に引っ張ったような強い打球が打てる。2軍の試合で何度も見てきたファンなら、きっと知っている。
打球はぐんぐん伸びていき、ライトフェンスを直撃した。2塁ランナーが生還し、同点に追いついた。小野寺も3塁に到達して、目の前のタイガースベンチに向けて力強く吼えた。
同点タイムリーの直後、小野寺は大山悠輔の犠牲フライで勝ち越しのホームを踏んだ。

シーズン中、選手の周りをまとっていた殻を突き破るような瞬間に立ち会えることがある。この日の試合でいうなら、そう小野寺だ。
チャンスで迎えた打席で1回もバットを振れず追い込まれるも、高めに来たボールを1回で仕留められた。2ストライク見逃してから長打を打てた。かつての小野寺ではイメージできなかった内容かもしれない。「調子が良いから」の一言で片付けるのがもったいないくらいのタイムリーヒットだったと、僕は思う。

きっと、もうしばらくはタマスタ筑後で小野寺の姿を見られないかもしれない。僕が試合を見に行っても小野寺の写真は撮れないかもしれない。でもそれでいい。小野寺はもう1軍で立派に戦える力を備えた選手になった。あとは自分らしくやるだけ。それが難しいことは痛いほど分かってるけど、小野寺ならきっとやれる。

だから、これからもそっと見守らせてくれ。

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