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岡留英貴の真っ向勝負に来年以降の希望を見た【9/27 対ドラゴンズ戦●】

ペナントレース最後の甲子園球場での試合。最後の最後まで何位になるか分からないシーズンが続いたから、穏やかな気持ちでシーズン終盤を迎えたもの久しぶりだ。試合は序盤に先制を許し、その後もじわりじわりとリードを広げられて敗れた。

それでも確かに、来年への種はまかれた。
先発した冨田蓮。リリーフした西純矢、及川雅貴の3人は共に2001年生まれ。平均年齢の低いタイガースの中でもひときわ若い3人だ。
そして9回のマウンドに途中から上がった岡留英貴もまた、大卒で入団して2年目の若い投手である。

下半身を潜り込むようにように沈ませ、横の低い位置からボールを放るのが岡留の特徴だ。サイドスローという括りでは青柳晃洋と同じかもしれないが、その青柳のフォームとは似て非なる投球フォーム。サイドスローは奥が深い。

僕が岡留を初めて見たのはタマホームスタジアム筑後での2軍戦。特徴的なフォームはさながら、そのボールの力強さに驚いた。変則的なフォームながらたしか球速も145km以上が出ていたはず。ネットの情報で好成績をキープしていることは知っていたが、その理由が分かった気がした。
2軍で好成績を維持していた昨年の岡留だったが、1軍で投げることは叶わなかった。正確には2度昇格する機会を得たが、いずれも試合で投げることなく2軍に落とされた。ほかの投手や試合展開の兼ね合いがある以上、こういうことが起きてしまうことは分かっている。でも、1軍に上がることすらなく終わる選手よりつらいんじゃないかって思ってしまった。

プロ2年目を迎えた岡留に、ほんの少しずつではあるが登板機会が巡ってきた。9月21日に今季3度目の昇格。この日は9回の1アウトからマウンドに上がった。これでプロ通算6試合目の登板だ。先頭の堂上直倫は初球で打ち取り2アウト。
ここでこの日2本のホームランを打っている細川成也を迎えた。右のスラッガー相手に変則右腕が対峙する。普段のシーズン中でもありそうな光景だ。
細川の出方をうかがうように、1球目2球目はアウトコースに外れた。3球目は真ん中外寄りの変化球で見逃しストライクを取る。アウトコースの出し入れ。
2本ホームランを打っている相手に再びやられないようにするためには妥当な判断と思えた。ならば次はもっとアウトコースに外したボール球か。

4球目。インコースにシュート系のボール。アウトコースじゃない。5球目は真ん中近くにいってファールになったが、キャッチャー坂本誠志郎はインコースを要求していた。
外の出し入れじゃない。力勝負だ。シーズンで20本塁打以上打っている細川相手に、岡留が力で押し切ろうとしている。
ファールになった5球目は球速150kmと表示されていた。

6球目も坂本はインコースにミットを構えた。岡留のボールが細川の懐を攻める。打球は完全に詰まり、バットは鈍い音を立てて折れた。ふらふらと上がった打球が大山悠輔のミットに収まり、甲子園に拍手の音が響いた。岡留が押し切った。



結果だけ見れば点差の開いた負け試合の1シーンにすぎない。
それでもインコースを攻めきったあのピッチングはこれからの岡留を良い方向に変えていってくれるんじゃないか。そんな風に思わせてくれるには十分すぎる内容だった。

今の岡留は大差のついた展開でたまにしか出てこない。去年と比べたらまだ良い方だけれど、まだ出番に恵まれているとは言いがたい。タイガースファンの間でも知名度はまだまだ低いだろう。
だからこそ岡留のことを書き残したいし、少しでもその良さが広まってほしい。まだタイガースリリーフ陣の中ではレアキャラだけれど、いずれきっとたくさんの試合で投げるようになるはず。もっと緊迫感のある試合で力強いボールを投げるようになるはず。


チームは18年ぶりの優勝を果たした。でもこれでタイガースが完結するわけじゃない。来年以降も戦いは続いていく。きっとこのチームはもっと強くなれる。そしてその一員に、岡留の名前はきっとある。

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