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打て 輝明【6/15 対ホークス戦●】

試合が始まる前のスターティングメンバー発表。

「1番、センター」

名前が呼ばれるのを待たずに、レフトスタンドから「うおおおお!!!」と、驚きと喜びが混じったような叫びが響いた。

約2週間ぶりに近本光司が1番に戻った。
と、なれば。次に注目するのは代わりに入る4番だ。

「4番、サード 佐藤輝明」

再び大きな声援が球場に反響した。
そうだよね。大山悠輔の留守を守れるのは、君しかいないよな。

中継映像でしか分からないことがあるように、現地でしか分からないこともある。
例えばそう、佐藤輝への声援の多さ。

昨日の試合、最終回に代打で出てきたとき。レフトスタンドからの声援は地鳴りのようだった。甲子園の試合でスタメン落ちした日の試合もそうだった。

試合の勝敗とは別に、球場で見たいプレーヤー。
グラウンドに立つだけで、みんなの注目を集めるプレーヤー。
決して全員がそうなれる訳じゃない。佐藤輝が特別な存在なんだって、球場に来ればすぐに分かる。

この日3回目の打席。佐藤輝が捉えた。
打球はライト方向、ファウルラインの内側に入った。ワンバウンドしてフェンスに当たった。大きな足が1塁ベースを蹴って進んだ。

2塁ベースに到達して、佐藤輝は3回手を叩いた。
自らの気持ちを解放するかのように力強く叩いた。
感情を爆発させたときにやる仕草だ。良い場面で会心のホームランを打てたとき、佐藤輝はホームインするときに手をパチーンと叩くシーンをよく見る。あれと一緒だ。

1アウト2.3塁。待望の長打で、チームのチャンスはさらに広がった。
続く前川右京が内野ゴロを放つ間に、タイガースは1点を返した。

佐藤輝のことを「悔しがらない」とか「気迫が伝わらない」とかいう人がいる。
今日の試合を見て、本当に同じことが言えるのだろうか。グラウンドにいる佐藤輝をじっくり観察して、それでも気迫がないと言うつもりなのだろうか。

チーム全体がバッティングに苦しむ状況で、メンバーの中心として全てを背負う。去年までにいた絶対的4番は、今はいない。打順はパスできないから、誰かが代わりに入らないといけない。
もしかしたら、今の佐藤輝は去年の大山より大きな重圧と向き合っているのかもしれない。
でも、もしそんな状況で佐藤輝がさらに突き抜けたら、もっとすごい選手になってくれるはず。

普通の人が背負ったら潰れかねない過度な重圧と期待。
それらを力に変えて大爆発する選手が、プロの世界にはいる。
佐藤輝にだってできる。

信じてるから。


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