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村上頌樹が投げた"スローカーブ"【2/24 対スワローズ戦●】

「なぜ・どうして」を考えるのが好きだ。たとえ答えが出なくとも、その理由をあれこれ考えている時間が自分の視野を大きく広げてくれる。「なぜなのか」「どうしてなのか」と考えられるようになると、好き嫌い以外で自分のことを表現できるようになる気もしている。


先発の村上頌樹が投じた3球目に、スワローズ・青木宣親が反応した。打球が一二塁間を破っていく。スワローズがいきなりチャンスを作った。
青木に打たれた球はずいぶんと遅いボールに見えた。
スポナビの1球速報を開く。アプリにはスローカーブと表示されていた。

併殺打の間に走者が生還し、塁上にランナーがいなくなった。村上宗隆相手に投じたのは、またしても緩いボール。高めに外れてボールになった。空振りでストライクを奪った後の2球目。再びスローカーブを投げた。アウトコースにいったボールをはじき返された。
また遅いボールだ。

2回の投球ではストレート中心に切り替えていたけれど、3回ではD.サンタナの打席で再びスローボールを投じた。このときは見逃しでストライクを奪った。

先日買った選手名鑑をペラペラとめくってみる。昨季の村上の投球割合のページ。カーブは全球種のなかで投球割合が最も低く、4.6%だった。およそ25球に1球程度しか投じない計算になる。昨シーズンのピッチングを思い出しても、2巡目、3巡目以降にちょこっと投げるくらいの印象しかない。

もしかして、遅いボールの使い方を試しているんじゃないだろうか。村上の武器であるスピン量の多いストレート。そこに緩急が加われば、打者はより速く感じるはず。
ピッチングを終えた村上がインタビューに応じていたが、スローボールのことは話題に上がらなかった。

オープン戦は選手の試行錯誤の過程をのぞかせてもらえる機会だと思っている。キャンプ中継でもブルペンで投手の様子を見られるが、ひとりひとりをじっくり映す機会はないし、映像からはどの球種をどんなコースに投げているかまでは分からない。だからこそ、オープン戦の登板でどんな実験をしているのかを想像するのが楽しい。シーズンが始まって同じような攻め方をしていたら「きっと手応えを感じられたんだな」って思えるし、反対に全く使わなったとしても「そうかしっくりこなかったんだな」って想像できる。

そもそも、去年までの村上はオープン戦で試行錯誤できる立場ではなかったのだ。ほかの投手と限りある1軍の枠を取り合う存在。出番が来れば目の前の打者を全力で抑えにいく。すべてはチームの信頼を掴むために。そういう立場の投手だった。
それがいま、自らの課題やテーマに沿って準備を進める立場に変わった。改めて言うことのほどでもないのだろうが、村上はそれだけの信頼を得た投手になった。積み重ねてきた鍛錬が花開き、こういった形で表れるようになったのが、僕はたまらなく嬉しい。

こうして絶大な信頼を得ても、慢心する投手ではないだろう。他球団のマークも昨年以上に厳しくなるはず。それでも、それを超えていってくれると僕は信じている。

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