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大山悠輔とペットボトル【8/9 対カープ戦●】

夏の高校野球が始まった。しばらくの間、タイガースは阪神甲子園球場とお別れだ。異常ともいえるこの暑さ。空調の効いた京セラドーム大阪のほうがプレーする選手も観戦するファンも快適そうだ。
 
屋外と屋内の違いだけじゃない。京セラドームはグラウンドにせり出したフィールドシートがある。バファローズファンの間では「大商大シート」と呼ばれるあの席だ。
グラウンドと同じ高さに設置されていて、選手たちと同じ目線で試合観戦ができる。そのうえ席の場所によってはテーブルが設置されているから飲食するにも快適だ。
京セラのフィールドシートは防球ネットが設置されていないから、ファウルボールが当然のように飛んでくるし、選手がファウルボールを追いかけて眼前に迫ってくることもある。野球ファンなら1度は座ってみたいと憧れる座席だ。

 
9回表の守り。直前に2点を返して3点差になったが、塁上に走者がいる。ただでさえ3点差の栗林良吏は厳しいことこの上ないのに、もし追加点が入ったら逆転は絶望的だ。投げている岡留英貴はもちろん、守っている野手陣も集中している。
 
2ストライク2ボールからの6球目。打球が1塁方向ファウルゾーンに飛んだ。ファーストの大山悠輔がフィールドシートのフェンス際まで寄って手を伸ばすも、打球は大山のミットが届かないところに落ちた。
打球が落ちるのを見届けてすぐに守備位置に戻る……かと思ったら大山は何か手元を気にしている。
するとミットを持っていない右手でシートの最前列に置いてあったペットボトルを立てた。
 
どうやらミットを前に出した拍子に、テーブルに置かれていたペットボトルを倒してしまったみたいだった。幸いフタはしまっていたので中身がこぼれることはなかったものの、大山は倒れたペットボトルを元通りにしてから、守備位置に戻った。
 
ああ、この人はどんなときでも周りのことを気遣えるのだな。
今回に限らず、そんな風に思えたシーンは数え切れない。
 
打点を挙げた後にファンに向けてする一礼は誰よりも丁寧だし、味方がデッドボールを当ててしまったときは出塁した選手に帽子を取ってお詫びの態度を示している。

背ネームが見えなくなるくらい深く一礼する大山

大山のすごいところは、自分の調子の良さ関係なくこれを続けられるところだと思っている。人間、機嫌の良いときはなるべく感じよく振る舞おうとするし、それができてしまう生き物だ。では反対に、良くないことが続いたときやイライラが積み重なっているときはどうだろうか。
僕は気分に左右される性格を自覚しているから、なおさら大山のすごさが身に染みる。すぐにできることじゃない。前からずっと丁寧な態度を心がけてきて、今の大山があるのだろう。
 
試合は対戦相手がいるから、勝てるときと勝てないときがある。もちろん勝てないときは悔しいし、もどかしい気持ちになる。
それでも、この大山がいるチームを応援したい気持ちだけはぶれないにしよう。
元通りになったペットボトルを見て、そんな気持ちになれた。

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