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島田海吏がレフトの守備についたとき、あったかい声援が送られていた【8/10 対ジャイアンツ戦○】


難攻不落の戸郷翔征を打ち砕いた近本光司の2ランホームラン。
あの戸郷より長いイニングを投げた先発の才木浩人。
またもやピンチをしのいだ島本浩也の好投。
勝利をぐっと引き寄せた原口文仁の代打2ランホームラン。

試合のターニングポイントはいくつもあるけれど、東京ドームのレフトスタンドで応援しながら試合を見ていた者として、途中からレフトの守備に入った島田海吏のことを書き残しておきたい。

時は8月9日の対ジャイアンツ戦にさかのぼる。レフトの守備に入った島田とセンターの近本が軽く交錯した。両者にケガはなかったが、ボールはグラブに収まることなく外野に落ちた。映像で分かる範囲では、捕球体勢に入った近本と横から走ってきた島田がぶつかったように見えた。守備と走塁でプロの世界を生きている島田海吏にとって、やってはいけないプレーだっただろうし、悔やんでも悔やみきれないのは容易に想像できる。
その直後にジャイアンツの中田翔が逆転のホームランを放った。後悔や絶望がにじみ出ている島田の顔を見ると、胸が潰れそうになった。

結果的に試合には勝てたけれど、SNSの急上昇ワードに「島田のせい」とあるのが目に入った。どんな書き込みがされているのか、怖くて見れなかった。

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話は10日の試合に戻る。カード最終戦となるこの試合。僕はレフトスタンドの応援席を取っていた。偶然にも、島田が守っていたレフトに1番に近い席。この日も展開によっては島田が守備固めに入るだろう。島田の心を悪い方向に乱すような心ない野次が飛ばないだろうか。少し気がかりだった。

試合終盤の7回。島田が代走からレフトの守備に就いた。僕らのいるレフトスタンドの方向へ島田が小走りで向かってくる。すると、どこからともなく大きな拍手が聞こえてきた。

「島田がんばれー」
「海吏きょうも頼んだぞ-」

……嬉しかった。

この日の島田は全ての守備機会を無難にこなした。というか、これくらいのプレーなら何も心配する必要などない。島田は外野守備のプロなのだから。きっとスタンドのファンも分かっているはずだけど、島田が打球を処理するたびにあったかくて大きな声援が飛んでいた。

「島田ナイスだー」
「いいぞ落ち着いていけー」

思えば、試合前の練習から島田に対するあったかい声援が飛んでいた。僕たちファンも何かしらの形で後押ししたいと思っていたのかもしれない。

この日9回に代打の代打で2ランホームランを打った原口が、とある試合前の声出しでこう呼びかけていた。
「野球は失敗するスポーツなので、それをみんなでカバーできるように」

前の試合では島田の失敗をチームのみんながカバーしてくれた。だから勝てた。そして島田は、その足の速さと守備技術の高さでほかの選手をカバーできる選手だ。ほかの選手なら追いつけなかったかもしれない打球も、島田ならキャッチできる。島田が掴んだ打球でひとりのピッチャーの勝ち星を守れることだってきっとあるはず。

野球は失敗するスポーツ。でもみんながほかのみんなをカバーできるチームは、きっと強い。
次は島田がほかの選手を救う番だ。

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