見出し画像

転がる植田、ホームに小幡が還る【5/11 対スワローズ戦○】

開幕カード3連戦を戦ってこんなことになるなんて、一体どれくらいの人が想像できただろうか。ショートの開幕スタメンだった小幡竜平。開幕戦は3安打猛打賞の大当たり。再三の好守備でピッチャー陣を支えた。だがそこから当たりがピタッと止まってしまい、代わりに入った木浪聖也が今度は大爆発。規定打席にはわずかに及ばないが、未だに3割超のハイアベレージを残している。
ふと気になって調べてみたら、小幡が最後に試合に出たのは4月20日のカープ戦だった。送りバントを決めている。もう3週間近く出場がないということになる。小幡目線で言えば、それだけ今の木浪に付け入る隙がないということだろう。
上手く言えないけれど、今年の小幡と木浪は僕たちにプロ野球の面白さと厳しさのようなものを教えてくれている、そんな気がする。

8回裏の攻撃、小幡がグラウンドに出てきた。1塁ランナーの坂本誠志郎への代走。試合は1対1でずっと進んできたので、小幡がホームを踏めばチームは勝ち越す。
8番の木浪のヒットで小幡は3塁を陥れた。打った木浪も2塁まで到達した。

試合終盤、一打勝ち越しの場面。当然スワローズは前進守備を敷いてくる。つまり、打球が前に飛べば勝ち越しできるチャンスがグッと広がる。代打は糸原健斗。バットコントロールに長けた糸原はこういうときにうってつけの打者だ。

3ボール1ストライクからの5球目。糸原がバットに当てた。打球はホームベース手前で強く弾んで、あまり勢いを失わないままショート・長岡秀樹の横に飛んだ。長岡は肩が強い。打球に入る勢いを利用して強いボールを本塁に投げてきた。

バットに打球が当たった瞬間、小幡がホームへ突っ込んでくる。コリジョンルールがあるからブロックプレーはない。ホームベースは塞げない。空いたホームベースの端っこに、小幡が懸命に腕を伸ばした。球審が腕を目一杯横に広げる。その瞬間、甲子園が地鳴りのように湧いた。矢野さんのときに何度も見てきた終盤の「脚の力」。久々にこういう試合を見た。見たかった。

バットが当たった瞬間にトップスピードに加速する脚力。相手捕手の立ち位置を見ながら突っ込む方向を瞬時に決める判断力。ここしかない、と言わんばかりのスペースに手を伸ばす天性の感覚。「気迫の走塁」で片付けるには惜しいくらい、彼の技術と魅力が詰まっていた。それなのに、小幡は涼しい顔をしてベンチに帰っていく。とんでもないプレーをしても、自分はいつもすまし顔。それが小幡のスタイルだ。

何より3週間近く出場がなかった状況でのこのプレー。スタメンも、ベンチも、全員が試合に入って行けている。いつしかの試合で代打の原口文仁が発した言葉。タイガースのユニフォームを着ている選手みんなが1つにまとまっているから、このチームはもっと強くなれる。もちろん、小幡だってもっと強くなれる。

勝ち越しの場面、植田海はベンチから転げていました

この記事が参加している募集

スポーツ観戦記

野球が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?