ブルペンの守護神【3/22 対アメリカ代表戦○】
ベースボールの祖国アメリカと激突し、栗山英樹監督が宙に舞った。オーダーを見るだけで胃の中がせり上がってきそうなアメリカ代表のバッター陣。日本のピッチャーたちがその力を上回り、反撃を許さなかった。
時折テレビがブルペンの様子を映す。そこには湯浅京己の姿があった。ゴムチューブで体をほぐしたり、マウンドで投球練習をしたりして、準備をしていた。試合の序盤から中盤はバファローズの宇田川優希、中盤から終盤は湯浅が投げていた。
準決勝の起用法から考えて、投げているピッチャーがピンチを迎えた時に出番が巡ってきたのだろう。あるいは、打球が直撃するといったようなアクシデントが起こる可能性だってゼロじゃない。何もないのが1番だけど、何かあったときのために別のピッチャーを用意する。そのピッチャーに湯浅が選ばれた。準決勝では失点こそしたけれど、彼の信頼は揺らいでいなかった。
特に8回の守りの前。ダルビッシュ有が登板に備える横で、湯浅も準備していた。小学校時代にWBCを見て日本代表に憧れた湯浅が、ダルビッシュの横でスタンバイしている。
もう、それだけで十分だった。
「世界一とりたいので、しっかり準備して頑張ります」
準決勝のあと、湯浅は報道陣にこう語っていたという。
出場メンバーにはその名前は刻まれていない。けれども、ブルペンで肩を作り、もしものときに備えた湯浅の姿が確かにあった。
その姿、忘れないから。