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前川右京 タイガースの"超変革"はまだ続いている【6/27 対ドラゴンズ戦○】

2016年、僕にとってちょっとだけ大きな出来事があった。プレーしていた姿を見たことがある人が初めてタイガースの監督になった。金本知憲が、タイガースに帰ってきた。
金本新監督が掲げたスローガンは「超変革」。難しいことはよく分からないけれど、何かチームを大きく変えようとしているのは伝わってきた。実際、この年でタイガースは大きく変わった。
タイガースの応援は毎日刺激的で驚きの連続だけれど、ここ10年くらいで僕が最も「何かやってくれそう」って思えたのは、金本監督1年目の開幕スタメンオーダー「1番・髙山俊、2番・横田慎太郎」を見たときだった。今でも自信を持ってそう言える。

金本監督がチームを去ってからもう5年が経った。そうなると、もう金本監督と一緒に戦った経験のある選手も少なくなる。ましてや若い選手の多いタイガースだからなおさらだ。
じゃあ「超変革」は終わったのだろうか。違う。まだチームの中で超変革は続いている。プロ2年目の前川右京が金本監督の意志を継いでいる。

前川は2021年のドラフト4位で智弁学園から入団した。当然その頃のタイガースは矢野燿大監督で、金本監督と同じユニフォームを着て戦った経験はない。ではなぜ、前川が超変革を受け継いでいる、と言えるのか。

前川がまだ高校生だったころ、監督をやめて評論家をしていた金本が智弁学園を訪問する機会があった。学生野球資格を取得した金本にとって、初めての高校生指導。プロ入りする前に金本と前川は出会っていた。
金本が前川に歩み寄って身振り手振りを交えてアドバイスをすると、バッティング練習の飛距離が伸びた。前川は自分が打った打球に驚きつつ、初々しい笑顔を見せていた。関西出身の高校生が技術も体力も最高だったタイガースの4番から直々に指導を受ける、こんな経験はそうそうできない。

この番組が放送された年、タイガースはドラフトで前川を獲得した。後で知ったことだけど、当時の矢野監督が熱望したことで獲得に至ったらしい。チームを変えようとしていたふたりの思いが前川に詰まっているような気がして、なんだか嬉しくなった。

それにしても前川の成長スピードが速すぎて、正直僕がついていけていない。今年は夏以降のどこかで1軍に上がって、甲子園の雰囲気を味わってくれればもう十分と思っていた。気づけば3番打者としてタイガースの中軸を担っている。スタメンはまだ相手先発が右投手のときだけに限定されているけれど、今日の活躍を見てその縛りもいずれなくなるだろう。左投手でスライダーを得意とする福敬登からヒットを放ったとき、僕はそう思った。変化球で体勢を崩されたが、持ち前のバットコントロールでボールをヒットゾーンへ運んだ。
3回に追加点を挙げるタイムリー、5回はチャンスを作るスリーベース。6回はチャンスを広げるヒット。強く大きなスイングと全力で走るその姿に、かつて指導を受けた金本「選手」の姿が重なった。

タイガースに入ったばかりの前川の入団会見を思い出す。
「将来は背番号6を付けたいです」

金本が監督時代にタイガースの将来を託した大山悠輔。入団前に技術指導をした前川。この2人がチームを、いやリーグを代表する選手になったとき、タイガースの本当の超変革は大きな花を咲かせる。もしそうなったら、すごく嬉しい。

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